不動産鑑定士レター 高利回りと低利回り、どちらが良い? 物件の事情示すシグナルに
住宅新報 2025年6月24日 号 3面
連載: 不動産鑑定士レター
不動産業界に入って以来、様々な立場の方と話す機会があります。「うちのクライテリアはIRR●%以上で…」「一等地で鑑定CAP●%だっけ、アレなにかあるよね」など、とかくこの業界の方々はパーセントでお話しすることを好まれます。「●%は高いね!」といった受け答えを、それは良い意味? 悪い意味? と忙しく頭を切り替えて聞いております。切り替えるポイントは「話している方は誰なのか」です。今日はその辺りをおさらいしましょう。
【価格と賃料の関係】
利回りは「利益何%」で「回っている」物件なのかを指標とし、「利益÷価格」で算出します。年間純利益が1000万円の物件としても、実際の市場では、1億円や3億円の物件もあります。利回りで捉えると前者は10%、後者は利回り3.3%です。理由は様々ですが、1億円の物件は約10年で取り壊されるということなのかもしれません。
では、利回りは高い方が良いでしょうか。低い方が良いでしょうか。答えは、「誰の立場から」見るかで異なります。安定稼働中(純利益が一定)の賃貸ビルとすると、売り手は高く売りたいので、利回りは低く出ます。一方、買い手は家賃が一定なら安く購入し、支払ったお金を早く回収したいので、利回りは高い方が良いです。
なお、ローンの場合は、お金を貸す側なら高利回りが、借りる側なら低利回りが望ましいでしょう。最近、鑑定士受験生と話していると、漠然と「立場が強いか弱いか」で捉えて混乱していました。
【投資家にとってはシグナル】
投資家ならどうでしょうか。投資物件の想定家賃収入に対して、利回りが高いと投資回収期間が短くなります。しかし、計算例のように10年で壊される予定とはいかなくても、築古ビルだとか、近々大きな修繕が必要だとか、複数テナントが立ち退く予定といった事情があるかもしれません。こうした物件は、管理状態・再建築不可物件ではないか・一棟貸しリスクはないかなどの事情を調査し、次の売却時期までを想定して投資判断されるようです。利回りの高低というより物件ごとの事情を示すシグナルと捉えているようです。
【鑑定士は利回りを俯瞰】
多くの鑑定士は、都心の一等地が最も低く、郊外や地方に行くほど高くなる序列として俯瞰して把握しています。個別の物件では、安定稼働なら低く、保有期間中のリスクが高い物件ほど高くなる、といった序列で捉えています。
【個人投資家と利回り】
さて、最近、不動産仲介サイトでは自己利用向けの物件に混じって「一棟ビル」「オーナーチェンジ」といった物件をよく見かけます。多くの場合「年間想定賃料600万円:表面利回り6%」などと表示されています。この場合、売出価格は概ね1億円と表示されるでしょうか。
しかし、実際の運用では、賃料収入から管理費・修繕費・固定資産税・ローン返済額などを差し引いた純利益÷物件価格の「純利回り」が重要です。特に個人投資家用の物件は、純利回りが1~2%台になることも珍しくありません。せっかく苦労してローン審査を通し、融資を受けて物件投資を行っても、手元に残る利益がほぼない、逆にマイナスということがないよう、利回りの知識をしっかり持っておきたいところです。
























