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プレミアム会員限定【暑中特集2026 止まらないインフレ】不動産マネー、宴に続く選別投資  「資産価格」と「稼ぐ力」を保つ 金利上昇を賃料成長が相殺

住宅新報 2026年8月4日 号 17面

総合
  • 【暑中特集2026 止まらないインフレ】不動産マネー、宴に続く選別投資  「資産価格」と「稼ぐ力」を保つ 金利上昇を賃料成長が相殺

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  • 【暑中特集2026 止まらないインフレ】不動産マネー、宴に続く選別投資  「資産価格」と「稼ぐ力」を保つ 金利上昇を賃料成長が相殺

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  • 投資先の主役はオフィスビル。アジア太平洋地域での流動性の高さに海外投資家の資金が舞い込む

    3 / 3投資先の主役はオフィスビル。アジア太平洋地域での流動性の高さに海外投資家の資金が舞い込む

 インフレと金利上昇が、不動産投資の前提を変え始めている。建築費、人件費、土地価格が高止まりする中、日本でも「金利のある世界」が定着しつつある。低金利で資金を調達し、物件価格の上昇によって売却益を得る従来型の投資は、次第に成立しにくくなる。ただ、不動産投資マネーの「宴」が直ちに終わるわけではない。JLLの「ジャパン・マーケット・ダイナミクス2026年第1四半期」によれば、同期の国内事業用不動産投資額は前年同期比1%減の2兆752億円だった。前年同期が第1四半期として過去最高だったことを考えれば、ほぼ同水準を維持しており、投資市場はなお活況を呈している。同社では、26年の年間投資額が25年を上回り、6兆円台半ばに達すると予測。金利上昇という向かい風が吹く一方で、オフィスを中心とした賃料上昇や供給制約が物件価格を支えているためだ。今後は市場全体が一律に冷え込むのではなく、賃料を引き上げられる不動産と、収益力の弱い不動産との二極化が一段と鮮明になりそうだ。

過去最高圏にある投資額

 世界の不動産投資額は26年第1四半期に前年同期比18%増加した。融資環境の改善や賃貸需要の回復、新規開発の減少を背景に、オフィスを中心に投資が戻り始めている。

 日本でも電通本社ビルやハイアットリージェンシー東京など、取引額が1000億円を超える大型案件が相次いだ。東京は世界の都市別不動産投資額で3位となり、国内投資額に占める海外投資家の割合も32%に達した。

 海外投資家が日本市場に注目する理由は、従来の「流動性」と「安定性」だけではなくなった。主要都市のオフィスや住宅、ホテルで賃料上昇が顕在化し、日本不動産に「成長性」が加わりつつある。円安による取得時の割安感や政治・社会の安定性も引き続き資金流入を支える。世界経済の不確実性が高いほど、アジア太平洋地域で流動性の高い日本市場を投資先に組み込む動きが強まる可能性がある。

オフィスに資金回帰

 投資先の主役はオフィスである。26年第1四半期のオフィス投資額は9891億円と、国内投資額の48%を占めた。23年通年の33%を底に、構成比は上昇を続けている。背景には、企業のオフィス回帰や業容拡大がある。東京のグレードAオフィスは第1四半期の新規需要が6万9000坪に達した。4棟・計6万7000坪の新規供給があったにもかかわらず、空室率は0.7%と低水準をキープした。1坪当たりの月額賃料は4万247円となり、前年同期比13.2%上昇した。長期金利の上昇を受け、投資家が想定するキャップレートはわずかに上昇したが、賃料増加がこれを上回り、想定価格は前年同期比16.4%上昇した。大阪でもグレードAオフィス賃料は前年同期比13.9%上昇し、調査開始以来初めて年間上昇率が13%を超えた。福岡も9.5%上昇している。人手不足や建築費高騰で新規供給が抑えられる中、人材確保を目的に高品質なオフィスへ移転する企業需要が賃料を押し上げている。

 金利が上昇しても、それ以上に賃料と収益が伸びるなら、資産価格は下がらない。現在の投資市場では、この賃料成長力が金利上昇の影響を吸収している。

「億ション」が示す過熱

 一方、住宅市場では収益力を上回る価格上昇も目立つ。全国で分譲された1億円以上のマンション、いわゆる「億ション」は25年末までの累計で7万6954戸に達した。25年単年の供給は8266戸と過去最多で、そのうち東京都が5947戸を占めた。

 資材費、人件費、用地費の上昇に加え、国内富裕層や海外投資家の取得需要が価格を押し上げている。東京都心の住宅は、住むための商品であると同時に、インフレや通貨下落から資産を守る「価値保存資産」としての性格を強めた。ただし、販売価格と賃料の乖離は広がっている。

 東京カンテイによると、新築マンション価格が年間賃料の何年分に相当するかを示すマンションPERは、24年に首都圏平均で28.93に上昇した。70m2換算の平均価格が前年比17.7%上昇したのに対し、賃料上昇率は3.2%にとどまった。

 一部の都心物件ではPERが50~60倍を超え、表面利回りが2%を下回る。現在の家賃収入だけでは取得価格を説明しにくく、将来の値上がりや希少性を前提にした取引となっている。金利上昇局面では、このような低利回り資産ほど価格調整の圧力を受けやすい。

金利上昇下の価格ねじれ

 一般的に金利が上がれば投資家の要求利回りも上昇し、不動産価格には下落圧力がかかる。しかし、足元では建築費や土地価格が高止まりし、新築物件の価格を容易に引き下げられない。建築コストの上昇と人手不足は、新規供給そのものを抑制する。

 JLLでは、この供給制約が既存不動産への投資を促すとみる。東京、大阪のオフィスや好立地の物流施設では、キャップレートが若干上昇しても、賃料上昇によって価格が維持または上昇する事例が現れている。

 東京圏の大型物流施設は、26年第1四半期の空室率が8.2%と3四半期連続で低下した。賃料は前年同期比3.1%上昇した。大阪圏も空室率2.1%、賃料上昇率2.8%と、オーナー優位の状況にある。ただ、物流施設でもすべてが同じではない。東京圏の周辺部や供給が集中する福岡・鳥栖エリアでは、立地や仕様、区画の柔軟性による選別が進む。好立地の高機能施設は賃料を上げられる一方、競争力の弱い施設は募集条件の見直しを迫られる。

ホテル、住宅にも資金

 第1四半期の投資額に占めるホテルの割合は15%、賃貸住宅は19%だった。ホテルは大型案件に加え、取引件数そのものが増加した。賃貸住宅では、海外投資家によるポートフォリオ取得が目立った。

 東京のホテル市場では、中国人旅行者の減少で訪日客の伸び率が鈍化したものの、米国や韓国などからの需要が補った。特にラグジュアリーホテルは客室単価が前年同期比14.1%上昇し、強い価格決定力を示した。ホテルはインバウンド需要や円安の恩恵を受けやすい一方、航空運賃や人件費、光熱費の上昇に左右される。今後は宿泊者数の増加だけでなく、単価を引き上げながら稼働率を維持できる施設が選ばれる。賃貸住宅も、人口流入が続き、賃料改定が可能な大都市圏では投資需要が続くとみられる。半面、人口減少地域や築古物件では、金利と修繕費の上昇を賃料に転嫁できず、収益性が悪化する恐れがある。

市況は選別調整へ

 今後12~18カ月の不動産投資市場は、全面的な価格下落には向かわない公算が大きい。賃料上昇力があり、新規供給が限られる都心オフィス、好立地の物流施設、インバウンド需要を取り込めるホテル、人口流入地域の賃貸住宅には、国内外の資金が引き続き集まる。賃料に消費者物価指数を連動させる契約の導入も、将来の収益成長期待を高める。一方、賃料を上げられない低利回り物件、借り入れへの依存度の高い案件、競争力を失った築古資産では取引が細り、価格調整が進む。金利上昇を賃料成長で吸収できるか否かが、資産価値を分ける境界線になる。

 リーマン・ショック級が訪れない限り、不動産投資マネーが市場から消滅することはなく、その流れが、あらゆる物件の価格を押し上げる「面の投資」から収益成長が見込める資産に集中する「点の投資」へと変わる。

 インフレに強いという理由だけで不動産を保有する時代は終わりつつある。これからは、インフレと金利上昇を上回る賃料を生み出せるかどうかで投資マネーは行先を選別する。不動産本来の「稼ぐ力」の嗅ぎ分けが始まっている。

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