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プレミアム会員限定鑑定士協連レター 地方創生と地価 地価下落、憂慮の必要ない

住宅新報 2017年7月11日 号 9面

連載: 不動産鑑定士レター

総合

 ◆元祖地方創生のまち

 徳島市に隣接する神山町は、過疎と高齢化が急速に進んでいる典型的な地方の町の一つです。昭和30年代に2万人を超えていた人口は、現在5500人程度に減少しており、毎年2~3%、人口減少が進んでいます。

 「地方創生」は14年9月の第二次安倍内閣発足時に掲げられて認知されていますが、神山町では「神山創生」が地域住民の手によって約20年前から推進されてきました。

 その歩みは97年に「国際文化村委員会」という組織が町に立ち上げられたことに始まります。99年より神山アーティスト・イン・レジデンス(国内外の芸術家が町内に滞在し創作活動を行うプログラム)という地域活動が毎年行われています。また総務省の後押しもあり、05年に町内全域に光ファイバー網が整備され、ブロードバンド環境が整いました。

 これが契機になり、10年にIT企業のサテライトオフィス第一号が誕生し、現在では16社が町内に進出。10年より「神山塾」という滞在型人材育成プログラムが始められ、その卒塾生が町内で起業している例も多く見られます。

 そして11年度には社会人口が増加に転じたことが大きな話題となりました。こうした地域の活性化が注目され、最近では全国から官民合わせて年間約300団体の視察団が訪れ、昨年は省庁の地方移転(徳島県では消費者庁の移転が検討中)のための実証実験が神山町で行われました。

 ◆神山町の地価動向

 一方、神山町の地価動向はというと、00年に下落に転じて以降、地価の下落が続いています。地価調査基準地の平均価格(町内3地点)は、00年の1m2当たり3万8800円から16年は1万4400円と37%の水準にあります。神山町での直近1年間の平均変動率は2.3%の下落を示し、下落基調が収束する見込みが立たない状況にあります。

 かつて土地の取得は将来を見据えた資産形成のためでもありましたが、現在では、活動に必要な最低限の範囲が確保できれば足りる状況にあります。人口減少に伴い、必要とされる土地の総量は当然に減少しますので、継続的な地価の下落は避けられない帰結となります。

 神山町ではまさに地方創生が軌道に乗り、町の活性化が実現されています。一方、地価の下落は進み、下げ止まり感も認められません。そもそも地方創生と地価とを結び付けて論じることに何らかの意義はあるのでしょうか。

 ◆大きい活性化効果

 神山町の「神山創生」は行政主導による企業誘致の類ではなく、民間主導により様々な形の学びの場、仕事の場を提供し、人と人との交流を繋げ、拡げていく人材誘致にその主眼が置かれています。神山町にふさわしい地域の創造が、地域の人々の実践活動により、実現されているのです。

 確かに地価は有力な経済指標の一つで、その下落は一見すると悪いこととされてしまいます。しかしながら、神山町の輝きを見るとき、人口減少が進む日本において、地方創生が進展することで社会的利益が拡大される意義は、計り知れないものがあります。地価の下落を憂慮する必要性はないと改めて思います。

(徳島県不動産鑑定士協会、澤嶋鉄哉)

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