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プレミアム会員限定鑑定士協連レター 土砂災害の危険性と土地 理解して正しく恐れること

住宅新報 2016年8月30日 号 4面

連載: 不動産鑑定士レター

総合

 ■危険なところに家を

 15年1月の土砂災害防止法改正・施行により基礎調査結果の公表が義務づけられ、不動産取引時には(特別)警戒区域に指定されている場合には重要事項説明書に一定事項記載されることとなりました。法改正は14年広島土砂災害などがきっかけで、災害から一年が経過していた頃、被災地を視察しました。

 広島入りする前、被災地周辺の様子をテレビで見て、山裾まで住宅地が張り付き「なぜこんな(危険そうな)ところに家を建てる…」と思っていました。ところが安佐南区の被災地を歩いてもなぜか危険な感じがしませんでした。

 その後、地元和歌山県で数多くの警戒区域、特別警戒区域内の土地を見てきて気づきました。あの時、広島の被災地で自分が立っていたのは5度から8度程度の傾斜のついた住宅地。その奥に見えていた山の斜面は15度前後です。表層崩壊を起こすような30度前後の急斜面は立っていた住宅地からは見えませんし、山の傾斜角度も木に覆われよく分かりません。

 ■警戒区域内の土地は

 今年6月に土地価格比準表が22年ぶりに改訂され、住宅地以外の商業地、工業地にも環境条件に「洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等」が追加されました。その中に土石流の記載はないが、崖くずれ等に入ると考えてよいでしょう。

 ここで気になることです。(1)土砂法に係る警戒区域、特別警戒区域内であれば比準表でいう「危険性有り」に該当するのでしょうか、(2)警戒区域内にある画地はどこも同じ危険度なのでしょうか。

 この(1)では、土砂法の警戒区域は土石流危険渓流の状況、渓床勾配、斜面の角度等をチェックし、「土砂災害が発生した場合、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域」と指定しているのだから『特別』ではない、警戒区域であっても「危険性有り」に該当する場合があるでしょう。

 (2)について、土石流の例ですと、谷の出口付近の画地は大きな被害を受けやすいですし、扇端部の一定の要件を備えた画地などは床下浸水ですむケースがあったり、それ以下の被害ということも考えられます。一方、指定はイエロー(警戒区域)であっても、実はレッド(特別警戒区域)並みに危険な土地もあると思います。

 土砂災害警戒区域、特別警戒区域の指定基準を正しく理解し、警戒区域内での対象不動産の位置や高さに留意し、土石流流路や急傾斜の土砂の崩れ方などを見ていけば、土砂災害の「危険性有り」度合いを判定できるかも知れません。それはひいては自分達が住んでいる場所の危険性を知ることにもなり、土砂災害を正しく恐れることにつながります。

 ■土砂災害地の地価

 広島市安佐南区緑井8丁目にある地価公示標準地は土砂災害後最初の年は9.5%の大きな下落率を示したが、次の年は変動ゼロとなりました。一方、和歌山県で11年に台風被害を受けた那智勝浦町川関地区に地価調査基準地は災害後最初の年が12.7%下落。翌年は10.5%と大きな下落が続きました。この違いは、その地区の不動産需要が回復しているか否かで、広島市安佐南区では視察時すでにミニ開発が再開され、数多くの住宅が建設されています。

 ■最後に

 和歌山県の沿岸部には南海トラフによる津波が心配されている地域が多くあります。その津波から避難する高台地の一時避難場所が土砂災害の警戒区域に指定されていたりします。土砂災害の危険性のある土地に自分達が住んでいることを常日頃から意識していれば降雨時の避難行動も早くなるかも知れません。

 私が知る地質や斜面防災の専門家の方々は豊富な知識と住民目線でとても頼りになる存在です。その人達から学んだ知識を生かし、自分も率先して情報発信していくことで、土砂災害による不幸な事故の減少につながればと思います。

 笑顔で雨上がりの虹が見られますように。

(和歌山県不動産鑑定士協会、船木博央)

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