鑑定士協連レター 福島県の復興と地価 2年連続、上昇率全国1位に 福島市の空間放射線量も大幅減少
住宅新報 2016年6月21日 号 4面
連載: 不動産鑑定士レター
11年3月に発生した東日本大震災から5年余が経過した。国土交通省が発表した16年1月1日時点の地価公示によれば、福島県内住宅地の平均変動率は2年連続で全国最大となった(プラス2.9%)。
県内の住宅地の平均変動率は、震災前の11年はマイナス3.2%、震災直後の12年は同6.2%、13年は同1.6%となった後、14年にはプラス1.2%に転じ、15年は同2.9%に伸びた。
震災直後は原発事故等の影響により土地の需要は大きく落ち込んだが、その後、原発事故の避難者が避難先等で宅地を買い求める移転需要が増加したのが2年連続地価上昇率1位となった大きな要因である。
【人口減少率も日本上位】
一方、福島県の人口については、少子高齢化に加え、原発事故による県外への避難者が多数存在するため、震災以降、毎年減少を続けており、16年3月現在の人口は震災直前の11年3月時点よりも約11万5千人減少している(5年間トータルの人口変動率はマイナス5.7%)。男女別でみると、男性が3万9千人減に対し、女性は約7万6千人減と、男性の約2倍の減少数となっている。これは、放射線の影響を心配し、夫を残して母子で県外避難するケースが多いこと、除染などの復興関連事業で男性作業員が多数流入したことが原因として挙げられる。
通常、住宅地の地価は、人口の増減と連動して上昇または下落すると言われる。人口が増えるとマイホームを求める世帯が増え、土地の需要が喚起されるため、住宅地価格は上昇する傾向にある。逆に少子高齢化等によって人口が減少するとマイホームを求める世帯は減り、土地の需要は限定されるため、住宅地価格は下落する傾向にある。したがって、我々不動産鑑定士が住宅地の地価動向を予測する場合は、人口の増減というデータを避けては通れないのである。
しかし、前述の通り、福島県では人口が減少しているのにも関わらす地価は上昇するという現象が生じている。これは、避難指示区域は地価公示の調査対象から外れており、本来マイナスとすべき土地がカウントされていないこと、避難者が避難先等で土地を購入する際の原資には原発事業者からの賠償金も含まれているため、一般の需要者よりも資金的余裕があり、条件の良い土地を高値で購入するケースがあることなどが要因であると思われる。
【除染が進む福島県】
原発事故によって放出された放射性物質については、年月の経過による減少のほか、住宅等の除染が着実に進んだ結果、大幅に減少している。例えば、福島市の空間放射線量は震災直後の2.7マイクロシーベルト時から0.19マイクロシーベルト時と実に93%減少しているほか、いわき市では0.07マイクロシーベルト時、会津若松市では0.06マイクロシーベルト時と震災前の平常時とほぼ同程度の数値まで減少している。
除染の進ちょく率は、住宅が78.1%、公共施設等が90.2%、道路が48.4%、農地が86.6%(いずれも国が行う除染特別地域を除く)となっており、着実に進んでいることが分かる。
これにより、震災直後は、放射線量が高いエリアの土地は敬遠され、地価水準が下落するという現象が一部で生じたが、避難指示区域を除く現在の県内では、放射線量の多寡で土地の購入を決定する需要者は殆ど見受けらない。
また、避難者数は12年5月の16万4865人をピークに減少を続けているが、16年3月時点では未だ9万7333人が避難を続けている。これらの避難者が地元へ帰還するか、避難先で永住するかによっても土地の需要に影響を与えることとなる。
今後、福島県の地価動向を予測するには避難指示区域の除染の状況と避難指示の解除時期の予測、避難者が帰還するかそれとも避難先で永住するかなど、日々流れるニュースにも注意する必要がある。
(福島県不動産鑑定士協会、二瓶直之)






















