随想タウンウオッチ (32) 不動産鑑定士横須賀博 人がこの世に残すものは
住宅新報 2015年12月8日 号 11面
小作農家の三男坊としてこの世に生まれた私は、茅葺屋根の一軒家で牛と同居して生活していた。そのためか、牛に対しては特別の愛着を感じている。
もとより我が家の牛は農耕用として飼っていたが、牛の力では時代の変化にそぐわないとして馬力に代わることとなり、牛との別れに泣きじゃくったことを覚えている。
ところで過日、時計の修理を依頼するため日本橋のデパートに行ったとき、ショーウインドーに「松坂牛」と示された時計バンドが目に入った。店長に尋ねたところ、松坂牛の皮革部分にはサシにも負けない良質な油脂が含まれており、時計の革バンドやズボンのベルト等に多用されていることを教えられた。並みの牛の肉でも革でも我々には満足そのものと思っていたが、上には上があることを知った。






















