どうなる、重説のIT化 推進派、消極派でかみ合わず トラブル時の証拠利用も
住宅新報 2014年6月10日 号 1面

6月3日に行われた検討会の模様(東京・港区の会議室)
「遠隔地の契約などで消費者が何度も足を運ぶのは大変だ。インターネットで重要事項説明ができれば負担が減る」「重要事項説明が最もトラブルになるところ。インターネットで行うのでは、更にトラブルが増える」「そういう根拠はない。業者のモラル違反などで起こっているものもあるので、インターネットを導入したからといってそれが影響されるわけではない」。
重説のIT化について、推進派と消極派の意見は食い違ったままだ。新経済連盟の関委員は、「インターネットで行えば、効率がいいだけでなく証拠として残る。もしトラブルがあっても記録を見れば言った言わないがすぐに分かるので、むしろトラブルが減ると思っている」。
これに対し不動産業界の委員は、「重要事項説明は仲介取引を行う上で、最も大事なところ。対面だと相手が疑問に思っていることが肌で分かり、その部分の説明を詳しく行ったり、臨機応変に対応できるが、インターネットではそうはいかない。相手が法人や宅建業者ならいいが、一般の消費者に対しては時期尚早では」と慎重だ。
6月3日に行われた2回目の検討会では、それぞれの立場からプレゼンテーションを行ったが、1回目からほとんど変化はなく、事務局が出した中間とりまとめの案についても、やはりそれぞれの立場から不足点などを指摘した(関連記事・溝が埋まらない議論)。
推進派は、「IT総合戦略本部で既にIT化することは方向性として決まっているのだから、すべての取引の重要事項説明について希望する人はIT化を選択できるようにすべき」と言及する。
積極活用望む意見
一方、不動産業界団体としては、トラブルになって責任を負うのは自分たちだということで、消極的にならざるを得ないのが現状だ。
その中で、日本賃貸住宅管理協会(日管協)は、いち早く賃貸契約の重要事項説明にインターネットを活用するよう意見書を提出した。
意見書では、「インターネットはあらゆる経済活動に浸透してきており、賃貸住宅における重要事項説明と賃貸借契約においても活用されるべき。特に入居予定者が希望する場合は積極的な活用を」「重要事項説明は、多様なコミュニケーション手段を認め、法人取引、個人取引のどちらにも区別なく活用を認めるべき」としている。
導入のメリットは
制度が浸透するかどうかは、その制度を導入することで何らかのメリットがあるかどうかにかかる。IT化のメリットとは何か。
消費者にとってみれば、重説だけのために時間をとって相手の事務所に行くという負担がなくなる。また、休みの日でなく、自分の空いた時間に説明を受けられる。また、推進派が言うように、説明の記録が保存されるので、トラブルになったとき証拠になる――といったものだ。
事業者側のメリットはどうだろう。時間を有効に使えるため、土日出社などが少なくなるほか、女性社員が在宅で行えるなど、家事との両立が図られる。また、IT化で説明資料などが見えにくいという声もあるが、資料の事前交付や画像使用などでより具体的に説明できる。そして、事業者にとっても、記録が保存されるのでトラブルになったとき証拠になる。
一方、デメリットはどうか。消費者が受けた重説が回線の状況などで一部見にくい、聞きとりにくい場合など、説明が不明なままで契約してしまう可能性がある(推進派は、説明をやめて後日環境を整えて行えばよいとする)。
ほかには、脆弱な通信環境だと成立しない、個人情報などが流出する危険がある。
事業者側のデメリットは、簡素な重説で済ましてしまうなどトラブルが増える可能性がある、希望者だけとした場合でも事前了解書が必要になるが、その法的実効性の担保をどうするか。また、それをメールで行った場合、果たして本人確認や意思確認が適切に行われるのか。物件情報や個人情報などが電子化により流出する可能性をどう防ぐことができるのか――といったことが考えられる。
情報の保護は
デメリットを見た場合に両者に共通するのが、情報の流出の危険性だ。検討会で進められた実証実験では、スカイプによるテレビ電話を使って重要事項説明を行ったが、スカイプは個人(客)の情報を収集して使用するため、個人確認のための情報や通信内容、IPアドレスなどの個人情報がスカイプの運営会社であるマイクロソフト社に収集される。消費者、事業者双方からサービスの利用規約やプライバシーポリシーへの同意を得る必要がある。
また、メリットで挙げられた記録の保存についても、悪意を持った消費者または事業者、あるいは悪意はなくてもトラブルになり、両者がその証拠を世間に広めようと動画配信サイトに投稿するなどの事態も考えられる。そうでなくても、不動産は環境や法令などの状況・制限で、千差万別だ。法的に説明すべき事項ではないが、購入者には知らせたい周囲の環境について、口頭でのやりとりも記録に残ると、それが流出した場合、名誉毀損になるケースも出てくることを危惧する事業者もいる。こうした点は事前了解の時点で、情報に関する条項などを設ける必要があろう。
希望者のみ利用
こうしたメリットとデメリットを比較考量し、デメリットをなるべく解消することで、重説のIT化を導入することは、時代の要請でもある。
推進派も「インターネットの活用が義務付けられるわけではなく、希望者のみが利用する制度。苦手な消費者は対面での説明を行う業者を選ぶことができる」(新経済連盟『不動産取引における対面原則・書面交付原則の撤廃について』)とし、強制ではないことを強調している。
検討会が6月にもまとめる中間とりまとめの案では、消費者保護の観点から取引の類型(売買と賃貸)、個人と法人の別についても留意して検討する必要があるとし、今後も議論を続けていく。
推進派、消極派それぞれの意見をうまく選りすぐり、消費者にも事業者にも使いやすく、もちろんしっかり理解できる重要事項説明がインターネットで行えるか。通信機器など周辺環境の進歩と併せて、時代に則した重要事項説明のあり方が求められる。


























