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スタンダード会員限定地域マネジメント学会 「地域」論考 在り方と提言 12 神楽坂での地域マネジメントの現況と展望

住宅新報 2013年6月25日 号 3面

連載: 「地域論考」

政策

1、はじめに

 神楽坂地区は、東京都心に位置しながら花柳界を社会的・物理的基盤とする伝統的な路地界隈が存続し、「粋なお江戸の坂のまち」として知られる。そこでは約30年にわたり多種多様なまちづくり活動が展開され、それが街の魅力を高め価値を保全・増進する重要な要素になっている。

 筆者は、神楽坂を主なフィールドに活動しているNPO法人粋なまちづくり倶楽部の理事として、また神楽坂に拠点を置く都市計画・まちづくり事務所の代表者として、9年ほど神楽坂のまちづくりに係ってきた。本論では神楽坂のまちづくりや都市計画の経緯について、地域マネジメントの視点を含めて整理、評価するとともに、今後の方向性について考察する。

2、神楽坂らしさの キーワード「多様性と和」

 神楽坂というと一般的には「和」のイメージが強いが、伝統の「和」だけではなく調和の「和」が特徴である。すなわち、多様な人たちが自分ならではの方法で時間を使い、居場所を見つけることができる。着物でまちを歩く人、ジャージやサンダル姿の人、おしゃれをした若い女性グループ等々、様々なまちの使い手が共存している。店舗も料亭から小料理屋、居酒屋、フレンチ、ラーメン屋、老舗和菓子屋、和風小物店、文房具店などが連なっている。一見バラバラのようであるが、多様性のなかでまちの調和感が保たれている。

 ではそれを可能ならしめている、まちのプランニングやマネジメントはどのようになっているのだろうか。ここでも多様な主体の緩やかな連携、すなわち「多様性の和」がキーワードである。

 神楽坂の魅力が、多様な人たちの多様な顔が見え、だれもが自分ならではの使い方ができることだとすれば、その価値が守られるよう、多様な商業者、住民、使い手によってまちの価値、まちづくりの理念が共有されることが大切になる。また江戸時代以降、神楽坂のまちが育み受け継いできた文化や価値観、景観を尊重しつつ、新陳代謝して次世代につなげるためのしくみが必要であり、神楽坂ではそのことに取り組んできた。その際、神楽坂というアイデンティティやイメージを保持するための「統一感」「規制」と、多様性を保持するための「個性の尊重」「自由度」のバランスがポイントである。

 神楽坂ではまちづくり活動と地域マネジメント活動が重複し、同義となっている場合も多い。まちづくりの理念やルール、運営方法はそのまま地域マネジメントにつながり、多くのイベントや文化的活動はまちづくりの理念を具体的に表現したものになっている。

 神楽坂には突出したまちづくりあるいは地域マネジメント主体は存在しない。多様なまちづくり主体が存在し、それぞれの活動を尊重あるいはあまり干渉せず、緩やかにつながっている。

3、次世代に向けた 地域マネジメント

 神楽坂では多様な主体がそれぞれ神楽坂らしさを追求し、緩やかなつながりによって緩やかな地域マネジメントが進展していると言えよう。

 その状況において、神楽坂のまちづくりやマネジメントは今後どのようにあるべきか、関係するそれぞれが何ができるのかを協議し合意形成を図る場をつくり、継続することも重要である。そのために、地区計画の合意形成機関として組織された神楽坂まちづくり興隆会が、地域連携の中心として連絡協議会的な機能を担い、関係者の定期的な情報交換を行うことが考えられる。そこで、現行法制度内で何が可能か検討し、例えば建築基準法第42条三項道路の指定、都市計画道路の廃止とそれに伴う壁面線位置の指定等、更に地域発の新しい都市計画、地域マネジメント方式の提案に発展することが期待される。

 前世代から受け継いだものを、少し良くして次の世代に受け継がせる。そのことは地権者にとっても利益大のはずである。今の世代だけでまちを消費し尽くしてはならない。まちの特質を明らかにし、それに沿ってまちを使いマネジメントすることが、まちの持続可能性を高め価値を最大化すると言えよう。

 (鈴木 俊治)

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