マンションPER 2012 〜最新価格と賃料相場から算出する新築マンションの潜在的収益力〜 Ⅲ 中部圏
連載: Kantei eye
中部圏
I. 駅別マンションPER (2010年7月~2012年6月の2年間を集計期間としている)
1. 概要
中部圏の駅別にマンションPERを算出 し、データサンプルが多く掲出可能な116駅を対象として分析している(路線図に掲出していない静岡県東部エリアも集計対象地域)。中部圏でも新築マンション分譲が回復しつつあり、昨年の100駅から僅かに掲出可能な駅が増加した。2012年中部圏のマンションPERは23.74と2011年の24.93から1.19ポイント(1年分強)改善している。近年の急激な収益性の悪化に伴い、昨年は首都圏平均のマンションPERと逆転現象を起こしていたが、今年は首都圏平均(23.83)を僅かに下回り、収益性の悪化に歯止めが掛かっている。
もともと中部圏では賃料見合いのマンション分譲価格が安価で、ミニバブル前の2006年には平均19.98と回収期間が20年を下回る極めて良好な収益性を維持していたが、ミニバブル以降は平均価格の上昇および賃料水準の頭打ちによってマンションPERが上昇(悪化)基調で推移している。2010年以降は新築マンションの分譲エリアが名古屋市内とその周辺地域にほぼ限られたため、郊外エリアの相対的に安価なマンションがほぼ皆無となって平均価格を押し上げてしまうという現象が発生し中部圏全域の収益性の悪化が進んでいたが、その傾向に2012年になってようやく歯止めが掛かったことになる。ミニバブル前の2006年と比較すると2012年は依然として3.76ポイント(4年分弱)収益力が悪化した状態にあるが、中部圏全域での分譲マンション平均価格は2,837万円と昨年の2,968万円から131万円(4.4%)下落しており、月額賃料は100,645円と昨年の99,806円から839円(0.8%)僅かに上昇し概ね横ばい推移していることから、マンションPERは数年間に渡る悪化傾向を脱している。
名古屋市内の優良な住宅地は旧来より名古屋駅から東側に分布しており、「覚王山」「いりなか」「八事」「本山」「総合リハビリセンター」など名古屋市営地下鉄名城線の東側エリアとその周辺の駅での分譲価格が高い。一方、賃料が高いエリアは「尼ヶ坂」「車道」「千種」「高岳」「名城公園」「伏見」など同線の西側(名古屋駅周辺エリア)にも分布しており、収益力の駅分布は地下鉄名城線の西側で高く、東側で低いという近接し たエリアでの“西高東低”の傾向を示す。集計対象駅の中で最も平均価格が高額だったのは、2年連続して名古屋市営地下鉄東山線「覚王山」の4,742万円で、最も月額賃料が高額だったのは名鉄瀬戸線「尼ヶ坂」の155,178円であった。こちらも2年連続して中部圏賃料の最高額を記録している。
3.2012 年のマンション PER ランキング
2012年に中部圏でマンションPERが最も低かったのは、名鉄瀬戸線「尼ヶ坂」の13.14であった。「尼ヶ坂」の新築マンション平均価格は2,448万円と中部圏平均2,833万円から385万円(13.6%)安価に分譲されているが、月額賃料は155,178円と前述の通り2年連続して中部圏の最高賃料を記録する水準であり、賃料見合いでは僅か13年足らずで分譲価格を回収できる計算となる。第2位はJR東海道本線「東静岡」(マンションPER:16.43)で、静岡県内で最も収益性が良好な駅となっている。これも月額賃料が141,210円と中部圏第3位の高水準であることがマンションPERを良好に保っている要因である。
第3位は名古屋市中心部から70km以上離れたJR紀勢本線の「津」(同16.92)で、他にもJR紀勢本線「松阪」(同17.99)、JR東海道本線「岡崎」(同20.12)など、一定の事業集積と人口集積を保持しているサテライト都市が上位に登場しており、一方、名古屋市中心部では名古屋市営地下鉄桜通線「車道」(同18.98)、名古屋市営地下鉄名城線「茶屋ヶ坂」(同20.11:定期借地権分譲物件含む)、名鉄瀬戸線「森下」(同20.30)などに限られる。名古屋市中心部ではここ数年タワーマンションや名古屋市東部に位置する高級住宅地で比較的高額なマンション分譲が継続しており、賃料見合いではやや割高な物件が多かったため、名古屋市全域での収益性は中部圏平均とは対照的に低下傾向にある。今後、消費増税を見越して分 譲価格がさらに上昇する可能性もあり、連動してマンションPERが悪化することも考えられる。
中部圏 新築マンションPER上位20駅(収益性の高い駅)
■は集計期間内に定期借地権分譲の実績がある駅
※この記事内の文章・図表の著作権は東京カンテイに帰属します。二次使用については東京カンテイの許諾が必要です。
中部圏 新築マンションPER下位20駅(収益性の低い駅) (※マンションPERの小数点第2位が同数の場合は、小数点第2位以下を参照し順位付けしている。)
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マンションPERが最も高かったのは名古屋市営地下鉄名城線「本山」の35.42であった。駅周辺の新築マンション平均価格は4,589万円と中部圏平均を大きく上回るが、月額賃料は107,970円と中部圏の平均的な水準に留まるため、賃料見合いでは35年を超える回収期間となる。同じ傾向を示すのは、名古屋市営地下鉄東山線「覚王山」(同32.40)および「一社」(同31.75)、名古屋市営地下鉄鶴舞線「いりなか」(同30.18)など市内の人気住宅地に位置する駅で、こちらも明確な居住ニーズが経済合理性を上回る強気の価格設定を支えていることを示唆している。また、JR東海道本線「共和」(同32.76)、名鉄常滑線「太田川」(同32.29)、愛知環状鉄道「新豊田」(同29.67)など郊外に位置する駅も収益性が低く、これは専ら月額賃料が7万円台と低水準であることに起因している。2012年にマンションPERが30を超える駅は上記を含めて9駅(7.8%)と昨年の11駅(11.0%)から僅かに減少しているが、名古屋市中心部および東部の人気住宅地と郊外の価格格差は決して小さくなく、また月額賃料の水準も明確な違いがあることから、大手マンションデベロッパーを中心とした高機能&高価格分譲スタイルに変更がなければ、今後も中部圏全域のマンションPERの改善は期待しにくい状況が続くものと考えられる。


"Kantei eye"は年4回、不動産マーケットの最新動向をレポートとしてお届けしています。「マンションPER」や「マンションのリセール・バリュー」「マンション価格インデックス」など 東京カンテイ独自のデータ分析によるマンション市況データをご覧いただけます。
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2012年 中部圏マンションPER(拡大して表示)
集計データの概要
データは全て東京カンテイ独自のデータベースに登録されているものを使用。
集計対象:
首都圏【東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県】
近畿圏【大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県】
中部圏【愛知県、岐阜県、三重県、静岡県】
専有面積30m²未満、事務所・店舗用のユニットは集計から除外
価格:
新築マンションの分譲価格を駅別に集計(70m²換算)
賃料:
分譲マンションの募集賃料を駅別に集計(70m²換算/月額)
集計期間:
首都圏:2011年7月~2012年6月
近畿圏および中部圏:2010年7月~2012年6月
賃料は中部圏で2005年10月以降
単位:
マンション価格は万円賃料は円
駅勢圏:
駅と分譲マンションとの立地関係は、駅によって比較的大きく異なるため、例えば、駅から徒歩10分以内などの特定の制限は設けず、ある駅を最寄として設定している全分譲マンションを対象としてデータを集計している
2. マンション PER の色分布の傾向
中部圏のマンションPERの分布は、マンション分譲エリアの減少と全域的な価格の高止まり傾向に歯止めが掛かり、僅かながら収益性が改善した。ただし、“名古屋市営地下鉄名城線内側エリア”の収益力は依然として明確に回復する状況にはなく、昨年も収益性が低かった“東山~八事エリア”に連なって収益性が平均以下であることを示す赤もしくは黄色が分布している。収益性が良好であることを示す青が分布しているのは、前述の通り名鉄瀬戸線「尼ヶ坂」や名古屋市営地下鉄桜通線「車道」など賃料水準が相対的に高い駅、および「津」や「松阪」などに限られる。賃料水準に大きな差がない中部圏では、マンション価格の変動が首都圏、近畿圏に比べて僅かであっても、その影響が収益性に表れやすいという特徴が実際のデータにも示されている。
青色で示した高収益な駅は2011年には12駅(12.0%)だったが、2012年は分譲価格の下落に伴って17駅(14.7%)に増加した。同様に緑色で示した収益性が平均以上の駅も2011年の28駅(28.0%)から2012年は33駅(28.4%)へと微増している。中部圏のマンションPERの分布は、近畿圏と同様に分譲価格の下落によって収益力が回復しつつあり、賃料見合いでの価格は、例年と比較してやや割安になったと言えるだろう。ただし、郊外においては賃料の絶対水準が低いため、価格が下落しても収益性に大きな改善は見られず、それが中部圏の平均値が下がらない要因となっている。
●“マンションPER”の考え方と算出の方法
マンションPER(= Price Earnings Ratio)とは、マンション一戸あたりの収益力を算出するために考案した当社独自の指標である。
すなわち、マンション価格を“現在の評価額”、月額賃料を“現在の収益力”と考えて、マンション価格が月額賃料の何年分に相当するか(=賃料が永年変わらないものとして何年で回収できるか)を算出している。
今回は「三大都市圏の新築マンション」を対象としてその分譲価格と募集賃料を集計し、駅別に平均値を算出した後に、比較を容易にするために専有面積を70m²に換算した理論値をもってマンションPERを算出している。
マンションPER = マンション価格 ÷ (月額賃料 × 12)
例えば、マンションPERが23.83であれば、その駅の新築マンション平均価格は駅勢圏賃料相場の23.83年分に相当する(=駅勢圏賃料相場に換算すると23.83年で回収可能)という計算になる。
したがって、マンションPERが低ければ収益性が高く、反対に高ければ収益性は低いことになる。
マンション維持管理のためのランニングコスト、および税金などの諸費用は考慮していない。
●リノベーションマンションなどの取り扱いについて
賃貸マンションや社宅などが大規模改修され、用途や権利関係などを変更した上で新たに販売される“リノベーションマンション”は、建物としては新築マンションではないので集計から除外している。
また、ミニバブル期以降に分譲が増加していた“定期借地権分譲マンション”は、やや新規供給が減少していたが、最近では都心部で息を吹き返しコンスタントな供給が行われている。
こちらは土地の権利関係以外は区分所有の新築分譲マンションであるため、今回も集計対象としている。
4.分譲価格と賃料水準によるマンション PER の類型
(1)収益性が高くなるケース
パターンA 高価格&高賃料でマンションPERが低い駅
分譲価格が概ね3,000万円台半ばまでの水準で中部圏平均価格2,833万円を上回る水準だが、月額賃料も10万円を大きく超えており、マンションPERが低くなる傾向にある駅である。「新静岡「」車道」のほか、名古屋市営地下鉄名城線 「ナゴヤドーム前矢田」(同21.38)、JR中央本線と名古屋市営地下鉄鶴舞線が乗り入れる「鶴舞」(同21.38)などがその代表例であり、交通利便性と居住快適性のバランスが取れたエリアとしての経済合理性が高く評価される結果となった。「自由ヶ丘」は立地としてはパターンCに属する駅だが、平均価格が3,000万円台前半に留まっており、収益性は良好な水準を維持している。
パターンA:高価格&高賃料でマンションPERが低い駅
■は集計期間内に定期借地権分譲の実績がある駅
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パターンB 低価格&優良賃料でマンションPERが低い駅
分譲価格は2,000万円台前半までで、なかには1,000万円台の安価な駅もあるが、パターンA同様に一定の事業集積性および交通利便性が認められるため、賃料水準が中部圏としては良好な10万円前後を維持していてマンションPERが低くなる高収益体質の駅である。「津「」松阪」など名古屋市のサテライト都市として機能しているエリアの駅、および「上小田井」「中小田井」など名古屋駅へのアクセスが良好な駅が並び、賃料見合いではマンションが極めて安価に購入できる割に月額賃料が高いので、出口戦略が立てやすいという特性がある。
パターンB:低価格&優良賃料でマンションPERが低い駅
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(2)収益性が低くなるケース
パターンC 高価格だが相対的に賃料が低くマンションPERが高い駅
分譲価格は3,000万円台後半以上で4,000万円台の駅も並ぶ水準にありながら、月額賃料は概ね10万円前後に収斂しており、賃料見合いでは割高となって結果的にマンションPERが上昇している駅である。最もマンションPERが高い「本山」は「覚王山」「八事」などと並んで中部圏有数の人気住宅地があるエリアであり、分譲価格は強気だが買って住むというイメージが強く月額賃料は10万円を僅かに上回る水準に留まっている。収益性を重視すれば、回収期間が長期化する傾向にあるため出口戦略はほぼ売却に限られる。
パターンC:高価格だが相対的に賃料が低くマンションPERが高い駅
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パターンD 低価格&低賃料でマンションPERが高い駅
分譲価格は2,000万円台と比較的安価ながら、月額賃料が10万円を大きく下回る水準で、結果的にマンションPERが高くなってしまう郊外エリアの駅が並んでいる。もともと居住形態がマンションではなく戸建中心のエリアであり、マンションに対する居住ニーズは限定的と言わざるを得ない。経済合理性を考慮すれば、これらの駅よりも賃料が高い駅周辺でマンションを探す必要があるだろう。
パターンD:低価格&低賃料でマンションPERが高い駅
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II. 地域別および属性別マンション PER
1.愛知県および名古屋市のマンションPER動向
愛知県および名古屋市の2007年以降の収益力の変化を見ると、グラフにも示した通り、毎年徐々に(賃料換算で1年分程度)収益性が低下していく様子が見て取れる。愛知県は2007年にマンションPERが18.70と驚異的な数値を示していたが、その後は年を追うごとに数値が上昇(悪化)し、2012年では24.08と5年間で5.38ポイントもの大幅な収益力低下が発生している。これはミニバブル後のリーマン・ショックの影響や名古屋に特有のトヨタショック、タイの洪水被害などが相次ぎ、景況感を大きく減退させていることが背景となっているものの、この間、月額賃料は緩やかに下落し続けており、対して分譲マンション価格は大手の供給シェアが拡大したこともあって現在も高止まりする状況にある。したがってマンションPERが示す収益性は毎年低下することになる。今後は消費増税が迫るなかで徐々に顕在化する“駆け込み需要”に対応するべく用地確保と供給増が見込まれており、土地の買い進みや資材価格の高騰とも相俟って、物件価格がさらに強含む可能性が否定できない。月額賃料はこのような市場動向には影響を受けにくいため現状を維持すると仮定すれば、必然的にマンションPERも上昇することになる。
中部圏主要都市 新築マンションPER推移
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2.属性別マンションPER
(1)最寄駅からの所要時間別マンション PER
最寄駅からの所要時間別マンションPERには中部圏特有の特徴が示されている。もともと月額賃料の絶対水準が首都圏および近畿圏と比較して低いため、中部圏の所要時間別賃料は極めて緩やかな下落傾向を示すに留まるが、分譲価格も徒歩3分以内で坪162.5万円と決して高い水準ではなく、分譲価格の下落率と月額賃料の下落率がほぼ同じであるため、結果的に所要時間別のマンションPERに大きな違いが表れないのである。いずれの所要時間においても概ね24ポイント前後の水準であり(徒歩21分以上はサンプル数が少なく特定物件のバイアスが表れている)、これは駅からの遠近という重要な立地条件が、中部圏では収益性には反映されないという事実を示している。価格も月額賃料も駅から離れるに連れて下落するが、それは価格相応の価値の低下なのであって、中部圏においては収益性の差異を示すものではないということになる。
中部圏最寄駅からの所要時間別PER
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(2)物件の最高階数別マンションPER
最高階数に関するマンションPERについては首都圏および近畿圏と同様の結果が示されている。すなわち、低層物件であるほど収益力は低く、高層物件になるに連れて収益力は改善されマンションPERも低下する。ただし、40階以上の分譲価格はまだ希少性が高いことを反映して坪226.7万円とほかの階数に比べて突出しており、収益性のバランスを著しく欠いている。40階以上のマンションPERを例外とすれば、中部圏においても眺望は収益性に影響すると見ることができる。9階以下の月額平均賃料は坪5,000円を下回るが、20階以上を平均した月額賃料は坪8,000円を超えており、階層の違いが賃料の違いにはっきりと示されている。
中部圏 物件最高階別 PER
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(3)物件の戸数規模別マンション PER
一方、戸数規模の違いによるマンションPERには近畿圏同様に傾向が見い出せない。駅からの所要時間別および階数別では月額賃料が変化しているが、戸数規模別の賃料には表われていない。いずれの戸数規模でも、月額賃料は坪4,000円台後半から5,000円程度であり、これも近畿圏同様に階数の違いによる月額賃料の多寡とは明らかに異なる。中部圏においても、戸数規模の違いが月額賃料の違いには表われず、マンションPERにも違いが発生していない。大規模マンションが今後増加する中で、徐々に賃料にも違いが表れてくるものと推測される。
中部圏 物件戸数規模別 PER
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さいごに
~ 出口戦略ありきのマンション購入とは
一般に、実需のマンション購入においてはマンションの収益性のみに着目して物件を選ぶことは有り得ない。実需目的の購入では「予算」および「予算内で選択可能な地域」が最優先され、これまでの生活習慣や家族の行動様式を踏まえて「予算」と「地域」を徐々にセグメントしていくのがマンション購入までの最も一般的なプロセスである。もちろん、この購入プロセス自体に疑問の余地はないのだが、このプロセスの中に組み入れるべき要素がマンションPERである。
我々はこれまでに二回、不動産に対する認識を改めざるを得ない経験をしている。最初はバブル経済とその崩壊である。バブル期以前の不動産は、所有していれば確実に価値と価格が上昇する優良な資産であったが、バブル経済の崩壊によってその認識は劇的に改まり、不動産は所有していると毎年確実に価値と価格が下落する不良資産となった。その次は2000年以降の収益還元価格の本格的な導入である。収益還元価格は、不動産が生み出す収益の多寡によって価値が決まり、その価値を評価するものによって価格が決まるという認識である。これによって、土地だけでなく建物も含めた“不動産の総合力”の違いが収益性に表れ、不動産価格が上昇する地域と横ばいもしくは下落を続ける地域とに分化するという状況が訪れている。現在では、不動産の価値と価格は地域的に把握することが困難になり、不動産価格もしくはその価値判断は、二極分化から多極分化へ、さらには個別化へと移行し始めている。
不動産の価値とそれを反映する価格に対する認識が大きく変化した現在、我々は自らが生活するための不動産を選択するにあたり、これまでの生活習慣や家族の行動様式を踏まえて「予算」と「地域」を徐々にセグメントしていく手法で“自分と家族が幸せに安全に生活するための不動産を選択する”ことが最早困難な状況にあることも認識しなければならなくなった。なぜなら、本稿で明らかになった通りマンションは自らが購入を決めた時点での「絶対的な価格水準」が高いか安いかということは既に大きな意味を持たないからである。不動産購入後のライフステージの変化や周辺環境の変化などをいくつかのシナリオとして手元に用意し、購入したマンションのその後を定性的なデータや地域固有の特性などの周辺情報によってある程度予測する術を持たなければ、現時点での価格水準が高いか安いかということが判断できない状況にあり、換言すれば、マンション購入以降の「相対的な価値」の変化を検証することなく購入に踏み切ることは、それ自体が多大なるリスクであると言わざるを得ない。消費増税を間近に控えた現在、マンション市場は“駆け込み需要”を想定したモードに切り替わっており、底地の買い進みによって今後は徐々に分譲価格が上昇することが確実される。“高品質なものを価値相応の価格で購入する”というスタンスがマンションPERを活用する本旨であるとすれば、価格の上昇期においても経済合理性を検証した上で購入の是非を判断することが、資産デフレ期における生活防衛法なのだと認識する必要がある。


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