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酒場遺産 ▶144 立川駅南口 大衆酒場 ふじ 変わらぬ硬派の一杯

住宅新報 2026年8月4日 号 15面

連載: 酒場遺産

総合
酒場遺産 ▶144 立川駅南口 大衆酒場 ふじ 変わらぬ硬派の一杯

 立川駅南口、線路沿いの路地を少し歩くと「大衆酒場 ふじ」の看板がある。1966(昭和41)年創業、半世紀以上にわたり、この地で営業を続けている老舗だ。立川の街は戦後、米軍基地(立川基地)と共に発展してきた歴史を持つが、北口と南口では性格が異なる。北口が基地文化の影響を強く受けた「アメリカンの街」として賑わったのに対し、ここ南口は地域住民や勤め人が集まる「日本人の生活圏」として形づくられてきた。「ふじ」が暖簾を掲げた60年代半ばは、まさに立川が軍都から商業都市へと本格的に舵(かじ)を切った時期にあたる。

 厨房を囲む大きなL字カウンターの上や厨房も壁には、品書きの短冊が隙間なく整然と貼られている。この白い短冊の几帳面に書かれた美しい字と白木のカウンターが、店全体に凛とした空気感を与えている。店主は硬派な職人気質と見え、馴染み客以外とは余計な口をきかない。凛(りん)としたたたずまいだ。店主をサポートする若い女性店員たちのキビキビとした動きもいい。この日頼んだのは、キンミヤ酎ハイと真鯛のかぶと焼きだ。酎ハイを飲みつつ、丁寧にかぶとの身を剝がしていると、ストイックな気持ちになる。品ぞろえは豊富で、うまづら刺身、松川カレイ刺身といった本格的な魚料理から、しらす玉子焼、エシャレットなどの手頃なつまみまで並ぶ。日本酒は剣菱、福生の多満自慢、松竹梅冷酒など。17時を回ると、常連らしい一人客が次々と席を埋めていく。飾り気も愛想もないが、酒と料理を丁寧に提供する。街も姿を変えてきた中で、恐らくこの酒場は変わらなかったのだろう。心が洗われるようなストイックな酒場だ。(似内志朗)

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