第105回「令和時代の賃貸ビジネス」 ~コンサルタント沖野元の視点~ 耐震補強で見えたヤモリの本気度
住宅新報 2026年7月28日 号 14面

前回はアフォーダブル住宅について、東京都が官民連携ファンドや東京都住宅供給公社からの転用、ディベロッパーへの容積率緩和など矢継ぎ早に施策を出していることを紹介した。
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筆者は当初、東京都からアフォーダブル住宅についての取り組みが発表された際、唐突な印象を受けた。都心部での住宅価格高騰で子育て世代に不安が広がる中で、矛先が向くのを避けるために急きょ出したアイデアではないかと邪推したのである。しかし、実はアフォーダブル住宅という言葉は東京都が令和7(2025)年3月にまとめた「2050東京戦略」という2050年代に目指す東京のビジョンを示した冊子に出てくる。東京都にとってはビジョンとして計画されていたものだったのである。
アフォーダブル住宅をテーマに掲げる不動産市場研究会では、ヤモリの藤澤正太郎氏に登壇いただいた。ヤモリは空き家や既存住宅などの再生や流通、そして不動産投資支援を行うスタートアップ企業である。
ヤモリでは空き家問題が解決しない理由として、空き家の物件情報や賃貸需要などのデータがないことや金融機関からの融資が付きづらい点をあげ、これを教育事業、クラウドプラットフォーム事業、ファンド化事業の3事業を中核として仕組みの構築で解決しようとしている。 教育事業とはオーナー育成事業であり、再生物件の購入や購入した物件の管理を提供している。また、空き家再生賃貸事業として、全国で既存戸建を買い取り、修繕後に保有して運営しているが、それらをスピード感を持ってかつ低コストで実現するためにAIやクラウドをフル活用している。
今年ヤモリは三菱UFJ信託銀行と共に東京都が公募した「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」に応募し、運営事業者として選定された。
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なぜ上場もしていない、一般的には無名に近い企業が選定されたのか。それまでのヤモリの実績として、全国で200戸を超える空き家再生の取り組みが評価されたのであろう。
講演では官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンドのスキームが紹介されていた。供給方針として、近隣類似の戸建賃料より20%低減した既存戸建を400戸程度供給するとしている。感心したのが、ヤモリは購入した既存戸建てで耐震性がないものについては全てに耐震補強工事を行っているという点である。耐震補強というと一般の個人オーナーは「利回りが下がる」と言って嫌うものだが、コストの掛かる耐震性確保を事業方針とするところは中途半端なビジョンではできないことである。提携する工務店に直接発注することで低価格を実現しているとのこと。今後もヤモリのアフォーダブル住宅供給について注目していきたい。
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【プロフィール】
おきの・げん 日大大学院修了。不動産コンサルタント。リーシングジャパン代表取締役。






















