大言小語 建物を支える見えない手
住宅新報 2026年7月28日 号 1面
連載: 大言小語

建物の値段が上がっている。鉄やセメントの価格だけが原因ではない。現場で電線を引き、空調設備を取り付け、壁の内側に配管を通す人たちが足りない。完成したマンションやオフィスを眺めても、そうした仕事の跡はほとんど見えない。電気はスイッチを押せばつき、蛇口をひねれば水が出る。それが当たり前であるほど、支える人の姿は見えにくくなる。
▼とりわけ電気や空調を担う専門工事会社の人手不足は深刻だ。前工程が遅れれば、しわ寄せは後工程に集まる。このため工期を守るには多勢を投入することになり労務費を積み上げる要因になりかねない。時計の針だけは、現場の事情を待ってはくれない。建物にも血管がある。電気や空調、給排水の設備は、いわば都市の血管ある。その血管をつなぐ人が減れば、立派な設計図があっても建物は動き出さない。
▼支払われた労務費が末端で働く技能者まで十分に届いているのか。建設費が上がる一方で、現場を担う人の待遇が上がらないのなら、どこかで流れが滞っている。建設業界には元請けの下に幾重もの企業が連なる重層下請け構造がある。孫請け、曾孫請け、玄孫請け…。幾階層の中で丸投げでマージンだけ抜き取るような悪しき慣行があるとされる。見えない場所で働く人に、賃金と時間と敬意がきちんと行き渡ることの重要性が説かれる一方で、仕事を横流ししてマージンを取る不逞があってはならない。






















