古民家宿の物語 日本全国リノベーション 142 跳びしまBASE (中) 人がつなぎ、人がつくる。島の古民家再生
住宅新報 2026年7月21日 号 11面
建築士の視点で吟味
購入後、柳澤さんはまず建物の状態を詳細に調査した。建築士として数多くの建物を見てきた経験から、残せるものと交換すべきものを丁寧に見極めていく。
太い梁(はり)が見える空間や、長年使い込まれてきた木の質感、昔ながらの建具など、この家が積み重ねてきた時間はできるだけ残したい。単なる宿泊施設ではなく、「島の暮らしを体験できる場所」にしたいという思いがあったからだ。
クラファンに挑戦した
しかし理想を形にする上で、大きな壁となったのが資金だった。古民家再生には想像以上の費用が掛かる。建築士として必要な工事内容は理解していても、個人で負担できる金額には限界がある。そこで柳澤さんはクラウドファンディングに挑戦した。
結果として、改修費を全て賄えるほどの資金が集まったわけではない。それでも、この挑戦は大きな意味を持ったそうだ。
「大崎下島で古民家宿をつくろうとしている人がいる」
そんな情報が全国へ広がり、多くの人とのつながりが生まれたのである。
クラウドファンディングをきっかけに、改修作業を手伝いたいという人も現れ、掃除や片付け、塗装など、それぞれができる形で工事に参加した。宿づくりは単なる建築工事ではなく、人と人との関係性によって少しずつ前へ進んでいった。
人に支えられて実現
更に、個人だけでなく、会社にも事業として関わってもらうことで国の補助金申請が可能となり、本格的な改修工事への道筋が見えてきた。
とはいえ、予算は決して潤沢ではなかった。本来であれば更に修繕したい箇所もあったが、優先順位を付けながら工事を進めていくしかない。
館内の家電、家具や食器のほとんどは中古品、近隣住民から譲り受けたものだ。「もう使わないから」と法事に使っていたそろいの器や骨董市でも売れそうな古い家具も含まれていた。こうして完成した「跳びしまBASE」は、家主を失った家がゆっくりと息を吹き返し、島の人の思いを宿す場へと変わっていた。
宿=跳びしまBASE
住所=広島県呉市豊町大長
ウリ=瀬戸内海のかつての暮らしを体験でき、島巡りの拠点におすすめ























