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社説 「ビジョン2030」後半戦 制度動かす人材育てよ

住宅新報 2026年7月21日 号 2面

連載: 社説「住宅新報の提言」

政策
社説 「ビジョン2030」後半戦 制度動かす人材育てよ

 「不動産業ビジョン2030」は後半戦に入った。2019年に産官学で策定された同ビジョンは、不動産業が目指す将来像として、地域課題への対応、新たな価値創出などを掲げてきた。前半5年では、空き家対策や居住支援、防災、地域連携など、不動産業に求められる役割は着実に広がり、制度や仕組みの整備も進んだ。次の5年で問われるのは、それらを現場でどう生かし、社会へ根付かせるかである。

 6月に開かれた日本不動産学会のシンポジウムでは、同ビジョンの前半5年が振り返られた。個別に語られてきたテーマが産官学で議論され、方向性は共有されつつある。これからは理念や制度を地域や現場で実践する段階だ。後半戦は、その実装力が問われる。

 例えば賃貸管理の分野だ。賃貸住宅管理業法の全面施行から5年がたち、賃貸管理業界でも管理会社に求められる役割は変わり始めた。建物や契約の管理だけでなく防災、高齢者や外国人への対応、居住支援など地域や社会との接点を意識した取り組みが各地で広がり始めている。制度の定着と共にその役割をどう社会へ広げていくかが新たな課題となっている。

 本紙が連載した「都市防災の担い手は誰か」(2026年6月23日号、同7月7日号)も、その課題を映し出した。東京都は制度を整え、地域や賃貸オーナー、管理会社も防災への意識を高め始めている。しかし、それぞれの取り組みが十分につながっているとは言い難い。制度が地域へ届き、行動へ結び付いて初めて、防災力は高まる。この構図は居住支援や空き家対策にも共通する。

 本紙がこの数カ月取材を重ねる中で印象に残ったのは、制度や理念を現場で具体的な行動へ移そうとする人たちの存在だ。管理会社が防災を日常業務へ取り入れ、地域と行政をつなぐなど制度を現場で形にする挑戦が始まっている。制度を現場へ落とし込み、人を結び付ける実践に共通点があった。

 いま求められるのは、制度を現場で動かす「実装人材」である。制度や専門知識を理解するだけではなく、行政、事業者、地域、利用者をつなぎ、社会課題の解決へ向けて現場で動かす人材だ。不動産業界では、管理会社、オーナー、仲介事業者、自治体職員など実装の担い手は一つではない。多様な主体が、それぞれの立場から社会実装を担う時代になりつつある。

 制度は人を育てない。人が制度を社会へ根付かせる。「不動産業ビジョン2030」後半戦で求められるのは、新たな制度や理念を積み重ねることだけではない。それらを地域で動かし、社会的価値へ転換できる人材をどう育てるかである。業界団体や企業の人材育成も、地域課題を解決する視点を一層重視すべきだ。業界団体、企業、行政が垣根を越えて人材を育むことが、不動産業の新たな社会的価値につながるはずだ。 

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