不動産取引現場での意外な誤解 売買編268 遺産共有解消のための画期的な特例措置とは?
住宅新報 2026年7月14日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回は、「遺産共有」の場合の特例的な措置として、改正民法が家庭裁判所以外での共有物分割を認めないという話でしたが、それ以外にも一般の「共有物」を含めていくつかあるようですが。
A.あります。1つは、画期的な改正といわれるもので、例えば、共有者2名のうちの1名が所在不明になったために、その共有物を売却できない場合に、他の共有者が不明共有者の共有持分を取得し売却することができる裁判制度を設けたことです(民法262条の2)。もちろん、その場合の他の共有者はそれ相応の対価を「保証金」として供託する必要があるのですが、その供託によって完全な所有権を取得できますので、第三者に売却することができるのです(非訟事件手続法87条(5))。
Q.後から行方不明者が現れたらどうなるのですか。
A.現われても持分の取得自体は変わりません。したがって、その現われた元の共有者が供託されている「保証金」の額が少ないということでその不足額の請求をする場合には、保証金の還付を受けつつ、裁判所にそのための訴訟を提起する必要があります。
Q.そうするとその共有物が「遺産」であった場合にはどうなるのでしょうか。
A.「遺産」であった場合には、相続開始10年経過後でなければ、そのような行方不明者の共有持分を他の共有者は取得できません(民法262条の2(3))。この場合にもその行方不明者の持分を取得する共有者はそのための対価を「保証金」として供託する必要があるのですが、民法がこのような「遺産共有」の場合には、相続開始10年経過後でなければ「所有者不明土地の解消」という大目的のための共有持分の取得であるとしてもこれを認めなかったのは、民法が「遺産分割」についての時間的制約として、相続人に対しこれを「10年以内」に行わなかった場合には「特別受益」や「寄与分」について主張できなくなるとしたことを受けて、逆に、その10年以内に行うことができる相続人の権利を守るために、相続開始10年経過後でなければ他の共有者であっても持分取得ができないものとしたのです(民法262条の2(3))。
なお、これらの一連の手続は、すべてその共有物の所在地を管轄する地方裁判所で行うことになります。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















