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プレミアム会員限定ディベロッパーの定義が変わる 本業の強みで街を変える

住宅新報 2026年7月14日 号 1面

総合
  • ディベロッパーの定義が変わる 本業の強みで街を変える

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  • 吹き抜けで地上とつないだDーLIFEPLACE札幌(撮影・小川重雄氏)

    2 / 3吹き抜けで地上とつないだDーLIFEPLACE札幌(撮影・小川重雄氏)

  • 誰でも自由に利用できるスカイラウンジを設けた日比谷フォートタワー

    3 / 3誰でも自由に利用できるスカイラウンジを設けた日比谷フォートタワー

 

異業種が描く都市開発の新たな競争軸

 住宅不足への対応、高度経済成長、再開発など、現代都市は、専業ディベロッパーを中心にその培ってきた技術や経験、事業ノウハウによって築かれ、発展してきた。その役割は今も変わらない。しかし都市開発を取り巻く環境は大きく変化した。脱炭素、人口減少、地域コミュニティーの維持、金利環境の変化、資産価値の向上など、求められる要素は多様化している。

 都市開発で問われている価値は、確実に広がり始めている。今では、どのような建物をつくるのかだけではなく、どのような価値を生み出せるのかが問われている――。そうした中、本業の強みを街づくりへ生かそうとする企業が存在感を高めている。なぜ、ほかに本業のある企業が不動産開発を推進するのか。それは、他領域で本業が別にあるからこそ、不動産だけでは導きにくい判断ができる点にあるようだ。社会価値を

 「保険会社が単純に、不動産も手掛けているとは考えていない」と、第一生命保険・不動産部不動産開発課長の松永崇氏は強調する。生命保険会社にとって不動産は、保険契約者から預かった資金を長期・安定的に運用するための重要な手段の一つとなる。その意味とは何か。そもそも同社の不動産事業に関わる起源は、100年ほど前にさかのぼる。

 1921年に東京・京橋に竣工した初代『第一相互館』は第一生命保険にとって、単なる本社ビルではなかった。商業施設やレストランを配置し、人が集い、交流する場となった。当時としては、先進的な〝街に、にぎわい生む〟発想だった。当時は専門部署がなく、1949年に不動産部が創設された後の現在までも、同社の不動産事業にその思いが受け継がれている。

 松永氏は、「700万人弱の保険契約者から預かった資金を運用する以上、限られた国土の中で不動産事業を行うのであれば〝社会価値〟を生み出さなければならない」と説明する。保険会社だからこそ、数十年先を見据えた視点で公共性を重視する。そこに同社が取り組む意義がある。単純に床を貸して収益を得るという考え方ではない。将来世代も見据える。人々の暮らしに寄り添う役割と不動産事業が果たせる使命が重なる。その考え方は、近年の開発プロジェクトにも表れている。

 同社営業拠点の建て替えプロジェクト『D―LIFEPLACE札幌』(札幌市中央区)は、地下歩行空間『チ・カ・ホ』に面した立地を生かし、地下と地上をつなぐ大きな吹き抜け空間を設けた。地下でも自然光や街の様子を感じられ、地域に開かれた交流の場を創出した。同・不動産部不動産企画課ラインマネジャー(不動産開発課兼務)の渡辺勇太氏は、「収益だけを意識すれば、テナントに貸し出す選択肢もある。この場所に求められていたのは、人が集まり、街とのつながりを感じられる空間だった」と、企画検討時を振り返る。

 地域の課題を読み解いて、「その場所ならでは」を形にする。それは、建物そのものではなく、利用する人や地域にも価値を提供すること。そこでは、資金だけを出し、全てをディベロッパーに任せる方法もある。ただ、自らで主体的に開発に取り組むことにも、大きな意義がある。松永氏は、「第一生命は、こういう街づくりをしているのか、と広く知ってもらう。新たな共同事業や投資にもつながる可能性がある。『第一生命でもできるのであれば、自社でもできるのではないか』と皆さんの気持ちに広がれば、それもまたうれしい」という。

 今後も同社では、オフィスや賃貸住宅を中心とした開発を推進する。地域の課題や利用者のニーズをつかみ、心身の健康や快適性、環境や社会への配慮など、選ばれるための前提の〝ウェルビーイング〟や〝サステナビリティ〟を共通の基本テーマに据え、追加するコンセプトを物件ごとに設定する。預かった資金を、街の価値へと還元していく。目指すのは、不動産事業の拡大そのものではない。100年受け継いできた〝社会価値を生む街づくり〟を、次の100年へつないでいくことにある。

課題解決を支える

 三井物産都市開発は、少し異なった問いと向き合っている。商社だからこそできる都市開発とは何なのか。その問いに、同社代表取締役社長の土原伸氏は、意外な言葉を口にした。「自身は30年以上、不動産関連事業に携わっているが、私見で正直に言えば、『商社らしい不動産事業』が何なのか。自分でも見いだせていない」。率直な一言は、完成形ではなく、今なお模索し続ける商社系ディベロッパーの現在地を表していた。

 しかし、同社の歩みを振り返ると、一つの軸が見えてくる。三井物産の本体が、そもそも不動産事業へ本格的に取り組み始めたきっかけは、取引先から寄せられる相談だった。「土地を売りたい」「遊休地を有効活用したい」「本社を移転したい」――。商社では鉄鋼や食品、化学、エネルギーなど幅広い産業と取引をする。不動産は経営課題の一つとして持ち込まれていた。

 土原社長は、「相談を受けて『専門会社を紹介します』では、格好がつかない。何とか応えたい、という思いが強い」のが商社なのだという。その思いから三井物産の本体や、前身のグループ企業の各社で対応してきたが、実は相談内容には地方の遊休地や工場跡地など、必ずしも採算性だけでは割り切れない案件も少なくなかった。しかし、「利益にならないからやらない」という選択はしない。取引先の〝課題解決〟が商社グループとして積み重ねてきた信頼の向上と、結果的に、既存の各事業にも還元されている。

 こうした背景にワンストップでの対応を志向し、15年に同社が不動産専業会社として生まれている。取引先の課題の解決に不動産ソリューションの提供で支援する。同社の開発事業は、取引先に関連する側面が多い物流施設からスタートした。今では物流施設ブランド『LOGIBASE』として成長した。様々な産業との接点を生かし、テナントの誘致などにつなげている。建設段階でも建材や設備、また運営までグループ企業や取引先とのネットワークを生かし、様々な選択肢を提示する。

 一方、オフィス開発では、『日比谷フォートタワー』で交流を生み出す開放型ラウンジを設けるなど、人と人との接点づくりを重視する。商社の強みは、一社で完結することではない。必要な人や企業をつなぐことにある。前述のように土原社長は、「これが商社らしさだ」とは言い切らない。むしろ、その答えはこれから形になっていく。確かなのは、グループ内外の様々なつながりを生かした総合力で開発事業に参画する。産業や社会を理解し、色々な選択肢を提示できる強みがある。

 今後は、従前の物流施設やオフィス、賃貸住宅などの単体開発と両輪となる事業の柱として、東京・日本橋再開発事業などの〝面的開発〟に力を入れる。地権者や行政、企業など多様な主体を巻き込み〝街全体の価値〟を高める挑戦を本格化させる。街全体を舞台に、多様なプレーヤーを結び付ける。そこから新たな価値を生み出す姿こそが〝商社らしい都市開発〟なのかもしれない。

強みの種類

 専業ディベロッパーも、街の価値向上や地域との共生に取り組んできた。その方向性は異業種プレーヤーとも重なる。生命保険会社や商社などは本業で培った時間軸やネットワーク、顧客との関係性を都市開発での「判断基準」に持ち込んでいる。ディベロッパーの定義が変わるとは、街づくりに生かされる「強み」の種類が広がること。環境配慮や地域とのつながりは、付加価値ではなく、事業を進める前提条件になりつつある。1つではない答えに、新たな競争軸が生まれつつある。

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