ニュースが分かる! Q&A 路線価上昇、相続前に確認すべきこと 相続登記、遺言、共有回避の3点が重要
住宅新報 2026年7月7日 号 12面
連載: ニュースが分かる!Q&A

市民(以下Q) 高齢の父親から、都内にある賃貸マンションを相続する予定です。路線価が上がっている中で何を意識すべきでしょう。
司法書士(以下A) 最初に確認したいのは、相続税評価額が前年より上がる可能性です。路線価は、相続税や贈与税を計算する際の土地評価の基準です。2026年分の路線価は全国平均で前年比2.9%上昇し、5年連続の上昇となりました。特に東京都は9.4%上昇しており、都内に不動産を持つ人にとっては、相続税評価額の増加に直結しやすい状況です。
相続財産の中で土地や建物の割合が大きい場合、路線価の上昇は「資産価値が上がった」という面がある一方、相続税の納税負担が増える要因にもなります。都内の賃貸マンションであれば、土地の評価、建物の固定資産税評価額、賃貸中であることによる評価減などを総合的に確認する必要があります。
賃貸マンション等は、自宅より評価が下がる場合があります。人に貸している土地や建物は、所有者が自由に使える不動産と比べて権利関係に制約があります。そのため、土地については『貸家建付地』として評価され、建物も貸家として一定の評価減が認められることがあります。満室か空室が多いか、賃貸借契約の内容、敷地の形状、接道状況などによっても評価は変わります。ただし、路線価そのものが上昇していれば、評価減を考慮しても相続税評価額が前年より高くなる可能性があります。特に都心部や再開発が進む駅前エリアでは、地価の上昇が続いており、過去の感覚で「この程度だろう」と考えるのは危険です。
Q 路線価は相続を控える人にどう影響しますか。
A 地価の二極化が進んでいる点に注意が必要です。
全国平均は上昇していますが、全ての地域が同じように上がっているわけではありません。大都市圏や、再開発・観光需要・人口流入がある地方中核都市で上昇が目立ちます。一方、人口減少が進む地域では下落や横ばいも残っています。都内の賃貸マンションは、まさに上昇圧力を受けやすい資産。相続人にとっては、将来の売却価値が高まる可能性がある半面、相続税の申告時には評価額が膨らみ、納税資金の確保が課題になりやすいといえます。
Q 相続発生前に家族で何を準備しておくべきですか。
A 財産の棚卸しと概算の相続税試算を行うことです。
対象不動産の所在地、路線価、地積、建物評価、借入金、賃貸借契約、家賃収入、修繕履歴を整理してください。そのうえで、預貯金や有価証券、生命保険、借入金も含めて、相続財産全体を把握することが重要です。
相続税は、評価額が高くても現金で納める必要があります。賃貸マンションを相続しても手元資金が不足すれば、納税のために売却や借り入れを迫られることもあります。特に都内不動産は評価額が大きくなりやすいため、早い段階で税理士に概算試算を依頼し、司法書士や不動産会社とも連携するとよいでしょう。
Q 司法書士の立場から見ると、どこが実務上のポイントになりますか。
A 相続登記、遺言、共有回避の3点です。相続登記は義務化されており、不動産を相続した人は原則として一定期間内に登記申請を行う必要があります。賃貸マンションのような収益不動産では、相続人が複数いる場合に共有になると、売却、修繕、借り換え、建て替えなどの意思決定が難しくなります。生前の段階で誰が不動産を承継するのか、他の相続人にはどの財産で調整するのかを話し合っておくことが大切。遺言書を作成しておけば、相続発生後の手続きを円滑にしやすくなります。ただし、遺留分への配慮を欠くと相続人間の争いにつながるため、専門家を交えて設計する必要があります。
Q 生前贈与で早めに移した方がよいのでしょうか。
A 贈与は有効な場合もありますが、税負担と制度を慎重に見極める必要があります。路線価が上がる前に贈与すれば評価を抑えられるという考え方はあります。しかし、不動産の贈与には贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税もかかります。相続時精算課税制度を使う場合も、将来の相続税計算に影響します。また、収益不動産を移すと、家賃収入の帰属や管理責任も変わります。相続税、所得税、登記費用、家族関係、将来の管理体制を含めて判断すべきですね。






















