彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇232 人と人とのつながり 生きる力の源泉 交流型賃貸への期待
住宅新報 2026年7月7日 号 11面
連載: 彼方の空
前号の本コラムは最後に「希望は人が人を思いやる街づくり」と述べたが、今年4月に都市再生機構(UR都市機構)の東日本都市再生本部長に就任した松村秀弦氏も「人と人とのつながりを生み出す街づくりを民間や地域住民と連携しながら進めていきたい」と語っている(本紙6月16日号2面)。
では人と人とのつながりとはなにか。そもそも人と人はどうつながっているのか。家族であれば最も強い絆である血でつながっている。職場の同僚は仕事仲間であり、ときに同志にもなる。つまり合目的なつながりである。街づくりでいう「人と人とのつながり」とはいわゆるコミュニティーのこと、日本語でいえば地縁である。
弱まる地縁
最近はこのコミュニティーが不動産業界でも話題になることが多い。地域ディベロッパー、リブラン(東京都板橋区)創業者の鈴木静雄氏は会社や自宅の前にベンチを置いて、通りを行く人たちとのつながりを大切にしている。特に自宅前に置いたベンチは見事に地域住民との交流拠点となっている(本コラム4月28日号参照)。
一方今年4月、創業70周年を迎えた北澤商事(東京都足立区)の3代目社長に就任した北澤龍一氏も「地域における人と人とのつながりがどんどん弱くなっている。当社は65周年のときに〝ブックカフェハレキタザワ〟を地域住民の交流拠点として開設したが、地元の不動産会社として地域に貢献できることはほかにもいろいろあると思う。地域の行事にも積極的に参加していく」と抱負を述べている。
地縁が弱くなっているのは、日本人が〝人との接し方〟を忘れかけているからである。見知らぬ人と話す必要性を感じていないともいえる。現代社会は家庭や職場を除けば、人と会話を交わさなくても生きていける。地域ではあいさつなどしなくてもとがめられることはない。子供の頃からそういう社会で育てば、人と接する術は覚えない。筆者もかつてブックカフェで開かれていた読書会に参加したことがあるが、やはり初めて会う人たちとの接触には戸惑いがあった。
もちろん、「人は一人では生きていけない」が、では誰にどういう助けを求めればいいというのか。分からないことはAIに聞けばなんでも答えてくれる。転職相談も退職手続きもネットの世界で完結する。人の心を思い測ることも、自分の心の奥底を伝える術も不要な現代社会。砂漠化は必然となる。
砂漠化する社会
近年、賃貸市場に広がる〝交流型賃貸〟はそうした砂漠化する社会の打破につながるだろうか。それともコンセプト化が進む賃貸住宅の一つの形態にとどまるだろうか。
日本人は住宅については〝受け身〟である。戦後、分譲マンションや建て売り住宅の普及で、家が〝建てる〟ものから〝買う〟ものに変わったことがその象徴となる。
しかし、近年は受け身どころか住宅価格の高騰で、そうした分譲住宅さえ購入することが難しくなってしまった。せめて賃貸市場では日本人の心の奥底にあるニーズを掘り起こすような感性豊かな賃貸住宅の開発を業界に求めたい。
住まいが〝生活の基盤〟と言われる理由は、住まいが単に生活の拠点ではなく、心のよりどころでもあるからだ。心のよりどころとは、生きる力の源泉になるという意味である。明日をどう生きるかと思い描くことが楽しくなる。そんな力をくれるのが住まいである。住まいになぜそのような力があるのかは前号に書いた。
交流型賃貸の登場は「人との交流」の中にこそ人としての喜びがあることを教えている。交流型賃貸は砂漠化する社会で人々が安らぎ、生きる力を取り戻すオアシスのような場であってほしいと思う。コミュニティーの研究はまだ始まったばかりだが、住宅・不動産業界にとっては最後のフロンティアとなる。
























