不動産取引現場での意外な誤解 売買編267 遺産共有の場合に共有物の分割訴訟はできる?
住宅新報 2026年7月7日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回は、「遺産共有」という新しい共有概念についての話があり、今回はそれに関する法改正についての更に詳しい説明ということですが。
A.「遺産共有」という共有概念は、すでに申し上げてきたとおり、相続のほとんどが「共同相続」の形態をとるために、その相続人の権利が「共有」の状態で相続されているからです。つまり、「共有」の場合には、その相続財産を維持管理するにしても、ケースによっては共有者全員の同意が必要になる場合があり、かなりのトラブルが生じているからです。
Q.維持管理をするのに共有者全員の同意が必要になるというのはどういうケースなのでしょうか。
A.同じ維持管理といっても、例えば、その共有物が建物で築年数が経っているために、新築同様の「大修繕」をする場合には、共有持分の過半数で決めるというより、全員の合意で決めた方がよいでしょう。しかし、同じ「大修繕」であっても、外壁塗装や屋根の修繕、防水工事などの場合には、改正民法でいう「形状、効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)」として、共有持分の過半数で決めることができると考えられますので、そのための法改正がなされたということです(民法251条(1)カッコ書)。なお、「軽微変更」に当たるかの判断は、単に費用の面だけではなく、「客観的に共有者に与える影響が軽微であるか否か」で判断すべきであるというのが法制審議会の見解のようです(部会資料51.6頁)。
Q.このような民法の共有規定の中にも、「遺産共有」の場合の特例的な改正規定は定められていますか。
A.いくつか定められており、最初に民法258条の2の「共有物の分割」に関する規定で申し上げます。
ABC3名が「共同相続」した土地をAが分割して欲しいと望んでも、他の2名が反対した場合は分割することができません。その場合に、改正前は地方裁判所に分割訴訟が提起できるような規定があったために問題になっていたのですが、このたびの民法改正によって、その窓口を家庭裁判所に一本化することにしました(同条(1))。この改正は、以前にも申し上げた共同相続人間の遺産分割上の権利(特別受益や寄与分についての権利主張が10年間はできるという権利)との関係に配慮したものです。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















