酒場遺産 ▶139 広島大須賀町 酒蔵 21年の大火災後も明かり灯す
住宅新報 2026年6月30日 号 11面
連載: 酒場遺産

1954年創業の、広島・大須賀町(エキニシ)の「酒蔵」を紹介したい。
先週取り上げた「岸本食堂」がエキニシの入口付近にあるのに対し、「酒蔵」は一番奥の角地に位置する。お好み焼き屋「ゆうゆう」や「大福」と並び、この界隈では長い歴史を持つ店の一つだ。衰退期には多くの店が暖簾を下ろしたが、志ある店が営業を続けたことで街の灯が守られた。その後、広島屈指の人気スポットとなった経緯は、前号の通りである。
活気あふれるエキニシにおいて、「酒蔵」は落ち着いた大人の酒場である。客層も他店に比べて年齢層が高く穏やかだ。隅切りのある角地を生かした独特な配置のカウンターが、居心地よい空間を作り出している。2代目女将の竹村晶子さんは、割烹着の似合う美人ママとして親しまれている。約23年前に脱サラし、先代の父から店を引き継ぐ前は、地元のラジオ局でDJをしていたという。2021年11月のエキニシ大規模火災の際も、「この場所で父が始めて約70年。元気なうちは、この街に明かりを灯し続けたい」と店を続けた。
広島出張の際に「酒蔵」にふらりと立ち寄ると、運よく空いていた左端の席に座ることができた。たまに訪れる程度の筆者を、女将は「何カ月ぶりかしら」と迎えてくれる。この日注文したのは「雨後の月」の純米吟醸、そして自家製らっきょうだ。女将が、鳥取県産の「砂丘らっきょう」を黒酢で漬けたというが、シャキッとした食感が良く逸品だった。カウンターには、出汁のよく染みた大根や豆腐、厚揚げをはじめ、里芋の煮転がし、小魚の南蛮漬け、ポテトサラダなどの手作り料理が並ぶ。広島に来たら必ず立ち寄りたい、大人の酒場である。(似内志朗)






















