不動産取引現場での意外な誤解 売買編266 「遺産共有」とは共有に関する新たな概念か?
住宅新報 2026年6月30日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.令和3年改正の民法・不動産登記法の改正内容のうち、特に重要な共有の相続物件の問題解決に向けた新たな制度についての話を伺ってきました。
A.共有の相続物件(共同相続物件)の問題がなぜ民法改正の重要なテーマなのかは、理解いただけたと思いますが、その一番の問題点は、「不動産」というものが遺産の中でも最も重要な財産と考えられており、しかも、その不動産のほとんどが法制度的に複数の相続人による共有の財産として相続されることになっているところにあります。そのため、改正前の民法は、「相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属する。」という規定だけが定められていたのですが(旧法898条)」、このたびの改正によって、基本的な規定だけを残しつつ(改正民法898条(1))、第2項に、(1)遺言による相続分の指定がない場合の「法定相続分」(民法900条、901条)と、(2)遺言による相続分の指定がある場合の「指定相続分」(民法902条)をもって各相続人の共有持分とするということを追加し、その共有関係をより具体化し明確化したということです(民法898条(2))。
Q.今まで運用されてきた「相続分」の考え方を明文化したということですね。
A.その上で、このたびの民法改正によって、「相続財産」について共有の規定を適用するときは、その遺産分割の際の「10年経過特例」の規定すなわち相続開始10年経過後は、相続人は家庭裁判所での特別受益や寄与分の主張ができなくなるという規定(民法904条の3)の適用があることになり、いわば「遺産共有」と呼ぶような新たな共有概念が構築されたような状況になってきているのです。
Q.となると、民法は、そのほかにも何か共有についての重要な改正をしているのではありませんか。
A.そのとおりです。詳しくは次回以降にお話しますが、共有(共同相続)に関する問題点は、それらの共有関係が長年継続・放置されてきたために、相続開始10年が経過しても遺産分割がなされず、その結果、相続登記が遅延し「所有者不明土地」の増加という国家的な大問題が生じているからなのです。そのために、それらの固定化された共有関係の解消に向けたいくつかの特例的な法改正がされたということです。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















