不動産クラファン・STの実務解剖 なぜ失敗するのか? グローシップ・パートナーズ 連載(2) なぜ不動産ST市場は拡大しているのか
住宅新報 2026年6月30日 号 8面

グローシップ・パートナーズ 代表取締役 松井晴彦
前回は不動産クラウドファンディング市場について取り上げた。市場拡大の一方、短期ブリッジ案件の増加や売却益への依存など、本来の「安定した不動産投資」とは異なる商品の増加を指摘した。また、実際に償還遅延や元本毀損事案も発生している。
一方、近年急速に拡大しているのが不動産セキュリティトークン(ST)市場である。三井住友トラスト基礎研究所によれば、不動産ST市場は取得時鑑定評価額ベースで累計約3400億円に達している。市場関係者の間では、26年内にも1兆円市場が視野に入るとの見方がある。なぜ、これほどまでに差がついたのか。その理由はブロックチェーン技術そのものではない。ST市場が評価されている背景には、「不動産を金融商品として成立させるための制度設計」がある。ST(Security Token)とは、ブロックチェーン技術を利用して権利を電子的に管理する有価証券である。
不動産STの初期案件では受益証券発行信託が主に採用された。権利の譲渡をデジタルで完結させる際、権利移転に関する第三者対抗要件をどのように具備するかが課題であり、その解決策として有効だったためである。その後、規制のサンドボックス制度の活用などにより、この課題はGK―TKスキームでも対応可能となった。GK―TKは不動産私募ファンドで最も一般的なスキームであり、近年は、ST市場でも活用が進んでいる。もっとも、投資家にとって重要なのはスキームの違いではない。STの本質は、金融商品取引法上の有価証券として厳格な規制の下で流通する点にある。






















