大言小語 価値のせめぎ合い
住宅新報 2026年6月30日 号 1面
連載: 大言小語

アクセルとブレーキを同時には踏めない。または、はしごを外された格好だ。村田茂樹観光庁長官は、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊の営業上限日数を条例で実質的に「ゼロ日」とする規制を容認する方針を記者会見で示した。法的拘束力のない「技術的助言」で各自治体に通知する。
▼同法施行の趣旨は、空き家の有効活用や訪日外国人の受け入れを拡大し、訪日客6000万人時代を見据えた「観光立国」政策の一環だったはず。「ゼロ日規制」は同法の趣旨を逸脱すると従来は慎重な姿勢だったが、方針転換する。国に賛同し、事業に参入した民泊事業者は、どう受け止めるのだろうか。
▼政策は理想を掲げ、現実の前で修正を迫られる。その象徴ともいえそう。地方創生の切り札と期待されたが、騒音やごみ出しを巡るトラブルで民泊の評価は揺らぐ。いつの間にか民泊は住環境を損なう火種になってきた。そもそも住宅地は静穏な暮らしの場。住むための住宅と、境界があいまいになった稼ぐための収益資産としての利用をどこまで認めるのか。都市政策の課題を浮き彫りにした。
▼国は今回、自ら明確な線引きを示さず、「助言」の形で自治体の判断に委ねる。これも一種の地方分権なのかもしれない。しかし、不動産を巡る居住価値と収益価値のせめぎ合いは、一段と鮮明になりそう。どこに均衡点を求めるのか。これからの住宅観そのものを問い掛けているようだ。






















