不動産取引現場での意外な誤解 売買編265 所有者不明の不動産の売却方法とは?
住宅新報 2026年6月23日 号 23面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回(第264回)の記述では、相続物件が遠方にあるためその管理ができない場合、その隣人等が裁判所に管理人の選任を申立て、その管理人を通じて管理してもらうことができるとのことでした。
A.この前回申し上げた事例は、その相続物件が遠方にあるために共同相続人が管理をしたくても費用が掛かり過ぎたり、相続人間で考え方がまとまらなかったりしてそのまま空き家として放置されるケースを想定しているのですが、例えば、その隣人がその相続物件を購入したいと考えているにもかかわらず、共同相続人間の意見がまとまらないために具体的な交渉ができないというような場合にも申し立てることができます。
Q.そうすると、そのような空き家の状況が長く続くと、その間に共同相続人の中の1人あるいは複数人が死亡してしまい、ますます売却交渉が難しくなるという事態も考えられますね。
A.その通りです。そのために、そのようなことで相続人の所在が不明になったり、連絡がつかなくなったりすることがありますので、そのようないわゆる「所在等不明者」が生じた場合の対応として、改正民法は、そのための「所有者不明土地建物管理人」の選任を地方裁判所に申立て、裁判所から管理人に対し、必要な処分を命じてもらうことができるようにしました(民法264条の2(1)、264条の8(1))。もちろん、そのための申立人は、その相続物件を購入したいと考えている隣人が「利害関係人」として申立てるということになります。
Q.話は変わりますが、もしこのようなケースで、相続人全員が相続を「放棄」したらどうなりますか。
A.相続を「放棄」しても、相続人の中にその物件を現に占有している人がいれば、その人に「保存義務」があります(民法940条(1))。しかし、本事例のように共同相続人全員が遠方にいる場合には現に占有している人はいませんので、保存義務はありません。
このような場合には、相続人全員が「相続財産管理人」の選任を裁判所に請求することにより保存義務を免れることもできます(民法897条の2)。したがって、そのような場合の隣人としてのその後の売却対応については、その相続財産管理人との間で行うことになります。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















