古民家宿の物語 日本全国リノベーション 139 森の中の古民家宿小萩野 (中) 太い梁、川のせせらぎ。魅力を生かした宿づくり
住宅新報 2026年6月23日 号 23面
旅館業仕様に一部変更
建物は、現代の建築では再現できない重厚感を漂わせている。古民家ならではの高い天井や太い柱、昔ながらの木組みがそのまま残されていて、「昔の家に泊まる」感覚を強く味わえる空間だ。しかも山深い道路から、急斜面の私道を降りていくと、突然、視界が開け、古民家の母屋がたたずんでいる。野趣に富む環境とのギャップが印象的だ。
一方で、水回りやトイレなどは現代的に改修されている。開業当時、旅館営業の基準を満たすため、屋根も本来の茅葺きではなく新しい屋根材へ変更。宿泊施設として安心して利用できる設備を整えながらも、古民家本来の雰囲気は壊さないよう配慮されている。
ロケ地としても可能性大
館内は1日1組限定で貸し切り利用が可能。寝室は複数あり、ゆったりと12人程度まで宿泊できる構成となっている。人数が多い場合は、庭にテントを張ることもでき、グループ旅行や学生の集まりなどにも対応している。
また、この古民家は映画やドラマのロケ地として利用されたこともある。昔ながらの暮らしを感じさせる空間は、映像作品との相性も良い。
館内だけでなく、外の空間にも特徴がある。敷地内ではヤギや鶏を飼育しており、子供たちが動物と触れ合える環境が整っている。もともとは知人から預かったヤギが増え、今では宿の風景の一部になっているという。
手作り感が客をもてなす
更に、敷地内の谷には小川が流れていて、夏には川遊びを楽しむ宿泊客も多い。夜になると焚き火や花火を囲み、都会ではなかなか味わえない時間が流れる。
宿の小屋や設備の一部は、オーナー自身による手作りだ。もともと電気関係の仕事をしていた経験があり、古い枕木や木製電柱など、不要になった資材を再利用しながら空間を整えてきた。
「使わなくなったものでも、工夫すればまだ生かせる」――そんな考え方が、この宿のあちこちに表れている。豪華な高級宿ではない。しかし、古民家と自然の力をそのまま体験できる場所として、「小萩野」ならではの価値を生み出している。
宿=小萩野
住所=山梨県上野原市秋山
ウリ=都市からのアクセスが良くて、自然豊かな環境























