酒場遺産 ▶137 広島 猿猴橋町 源蔵本店 刺身盛り合わせ厚切りで滅法美味
住宅新報 2026年6月16日 号 11面
連載: 酒場遺産

仕事の出張で広島についたのが19時近く。店に着いたのは閉店間近で、ギリギリで店に滑り込むことができた。1945年8月6日に焦土となった広島だが、「源蔵」のある広島駅から近い猿猴橋町には、自然発生的に闇市が形成されたという。そして終戦からわずか3年後の48年に、初代の榊田源蔵氏により「源蔵」が誕生した。バラック造りからのスタート。2011年に現在の3階建てに建て替わったが、筆者が30年ほど前に訪れた時の記憶にあるのは、床が傾き油と煙で燻された飴色の天井、壁一面を埋め尽くす無数の短冊メニュー、そしてテレビから流れるカープ戦だった。広島駅周辺は再開発ですっかり姿を変えたが、猿猴橋町はかつての風情が残っている。今の店は飾り気のない白っぽいインテリアで大きなテーブルが並ぶ。奥の大きな厨房では、何人かの女性が魚を捌き料理をつくる。メニューは豊富で、自慢の海鮮は、刺身盛り合わせ、クジラベーコン、いか下足刺身、たこ刺身、かつおたたき、おばけ、〆さば刺身、まぐろ刺身、かんぱち刺身、ひらめ刺身、たい刺身など。これに季節ものの小いわし刺身、さより刺身、はも湯引きなどが加わる。
酒は広島の地酒が中心で、雨後の月、誠鏡、神雷、瑞冠、旭鳳、老亀、美和桜、華鳩、賀茂泉、賀茂鶴、酔心、亀齢など多彩だ。焼酎や麦酒なども一通りそろう。
頼んだ刺身盛り合わせは、鰤・サーモン・鯛・しめ鯖の4種、これが厚切りで滅法美味かった。酒は広島県三次の銘酒「美和桜」純米を燗でいただいた。濃厚で美味しい。 長身で知的な風貌の3代目店主に「魚が美味いですね。どこで仕入れてるんですか」と聞くと、「2つの中央市場でその日の様子を見て仕入れています。でも最近は地球温暖化、7年前の土砂崩れの影響とかで、瀬戸内海でも魚は以前より捕れなくなっています」と言う。店主は勘定を終えた客に自ら扉を開け深々と頭を下げ「またお出でください」と丁寧に挨拶をする。 (似内志朗)






















