不動産取引現場での意外な誤解 売買編264 相続物件が管理者不在で管理不全になったら?
住宅新報 2026年6月16日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.この【売買編】において、ここ2回ほどは遺産分割に伴う特別受益と寄与分に関する話ですが、この問題は以前の売買編でも取り上げられたことがありませんか。
A.あります。以前の売買編第257回の掲載分で、主に「寄与分」に関する「特別の寄与」がどういうものか、なぜ相続人間でもめるのか、それをどのように解決していくのかを中心に記載しました。
Q.それで民法が、相続開始10年経過後は、遺産分割のトラブルを解決するために家庭裁判所での「特別受益」や「寄与分」についての主張を制限したのですね。
A.その通りです。生前贈与等による「特別受益」や被相続人に対する生前の労務提供、療養看護などの「特別の寄与」といった家族間の問題についてはできるだけ早く解決しないと、それらの事実関係がわからなくなってしまうからです。
Q.そうすると、民法は、それらの相続開始10年経過後の遺産分割に関する改正以外にも、何か重要な法改正をしているものがあるのではないでしょうか。
A.あります。今回の民法改正には所有者不明土地の解決という大きな目的がありますので、その関連で、例えば相続財産が遠方にあるために管理が行き届かない、あるいはできないという場合のいわゆる「管理不全」の問題に対処するための改正があります。それは例えば、相続人が1人であれば、その相続人が単独相続をし、それを他人に賃貸するなり売却するなりして解決することができるのですが、そのような問題の多くは、相続人が複数いるために、考えがまとまらなかったり、反対する者がいる、あるいはすでに死亡している相続人がいるなどしてどうすることもできないケースがあるからです。
そこでそのような問題に対処するために、民法は、それらの共有者(共同相続人)が管理しない、あるいは管理できないのであれば、その隣人等の関係者が「利害関係人」として、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申立てるか(民法897条の2)、地方裁判所に「管理不全土地建物管理人」の選任を申立て(民法264条の9(1)、264条の14(1))、それぞれの管理人を通じて、その土地建物の保存・管理・処分に関する交渉をすることができるようにしたのです。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















