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スタンダード会員限定実需層の購買意欲 落とす 価格高騰、その先は―〝住宅市場 社会価値〟への挑戦 家賃設定に新基準

住宅新報 2026年6月16日 号 1面

総合
年収倍率においても既に一般の勤労者世帯の取得能力をはるかに超えている

年収倍率においても既に一般の勤労者世帯の取得能力をはるかに超えている

要因は建築費だけか

 マンション価格の高騰は続いている。不動産経済研のデータで首都圏新築マンションの平均価格を10年前の15年と比較すると約65%、1m2単価では80%近く上昇している。その最大の要因は建築費の上昇と思われるが、それだけではない。ちなみに、建設物価調査会の建築費指数でこの間(15~25年)の推移(RC造集合住宅)をみると約40%の上昇だ。つまりマンション価格高騰(65~80%)の要因は建築費だけではないことが分かる。

 では、その他の要因とは何か。公示地価ベースでみると東京23区の住宅地平均価格(1m2当たり)は15年の約52万円から25年の約77万円へと48%上昇している。富裕層や投資マネーの流入も価格を押し上げている。

 オラガ総研社長で不動産開発コンサルタントの牧野知弘氏は、「日本の世帯金融資産の26%が全世帯の3%(165万世帯)に過ぎない富裕層(金融資産1億円以上)に集中している。反対に金融資産3000万円未満の世帯が全体の8割を占めている。中間層は完全に破壊された。それが日本の現状だ」と指摘する。更に、投資マネーについては「国内外の投資家は取得から3~5年で売却する。同様に中堅のマンション業者もこうした転売目的の取得を積極化している。価格高騰で従来のような新築供給が難しくなっているからだ」と話す。

仮に建築費や土地価格が今後落ち着くことがあっても、高値購入を意に介さない富裕層や投資マネーが市場をリードする限り、一般国民の住宅取得環境は厳しい。牧野氏は坪単価1000万円以上、戸当たり数億円もの新築マンションが都心5区などで続々供給されていることについて「理論値では説明できない〝アート価格〟とも表現できる価格帯へ突入している。最も被害を受けるのは住宅を実需で求めようとしている人たちだ」。

 かつては、若年世代の1次取得層など実需者向けのマンションを大量に供給していた大手マンションディベロッパーは、今のこうした閉塞状況をどう見ているのだろうか。

ペアローンが急増

 三菱地所レジデンス社長の明嵐二朗氏は、「新築工事費がここまで上がってくると、新築でなくてもいいのではないかという発想もある。リノベーションとかコンバージョンとか。一から作ろうと思うから採算が合わないのであって、今あるものを上手に使えばコストダウンできる。当社はそうしたリノベーション事業『リノレジ』にも力を入れている。ストック活用には大きな社会的意義があるからだ」と語る。

 また、近年における購入層の変化については、「株や債券など金融資産を持つ人たちの予算が格段に上がったと感じる。また、そういう金融資産を持たない実需層の変化として顕著なのがパワーカップル世帯の急増だ。昔のように女性が結婚すると会社を辞めるようなことは本当に少なくなった。この10年間でペアローンを組む世帯の割合はかなり上昇した。顧客の景色が全然違ってきた」と指摘する。

賃貸住宅への期待

 分譲価格の高騰で賃貸住宅からの脱却を足止めされている1次取得者層も多い。せめて少しでも広い賃貸に移ろうとしても家賃上昇が障害となる。更に今入居している賃貸も家賃の値上げ圧力にさらされている。一般国民の住まい確保への不安は高まる一方だ。そうした中、東京都が新たな政策として打ち出した「アフォーダブル住宅」供給政策が注目されている。

 都市政策に詳しいニッセイ基礎研究所社会研究部都市政策調査室長の塩澤誠一郎氏は次のように指摘する。

 「日本はアフォーダブル住宅政策を今こそ本格検討すべきとき。英国や台湾で供給されている〝社会住宅〟が参考になる。非営利部門の住宅協会などが実施しているもので、中間層向けのアフォーダブル住宅と住宅確保要配慮者向け住宅、更に市場家賃住宅を一緒に開発し、いろいろな層の人たちが一緒に住むことに価値を求める街づくりを進めている」

 家賃のほか政府の補助金や企業の寄付金などで運営を行っている。英国ではこのように異なる階層が共に助け合い、時には職に就くためのトレーニングを提供する機能をもった社会住宅を一定数供給することが都市計画で義務付けられているという。

 「日本では住宅改良開発公社がこれからの賃貸住宅のあり方として、この社会住宅的手法を導入できないかと研究している。注目すべきは賃貸住宅の価値を立地や間取りの広さだけで計るのではなく、そこに住むことでどれだけの社会的便益を得て、かつ楽しく暮らせるかを評価する手法だ。いわばソーシャルバリュー(社会価値)の創造だ」。塩澤氏は同公社の「あしたの賃貸プロジェクト」推進メンバーでもあり、今後の研究成果に期待を寄せる。

不動産業の未来

 人口減少が加速するこれからの日本は自治体にとっても地域価値の創造が最大の政策目標となる。これまでにない魅力的な賃貸住宅を供給し、そこに若者世代から高齢者まで様々な人たちを集めることが出来れば持続可能な街づくりへとつながっていくだろう。

 前出の牧野知弘氏は「不動産業の未来」について、「これからの不動産業の役割は従来の〝点〟の確保から、〝面〟の確保へと移行する。住宅としての点は地域の価値向上に、オフィスとしての点は街としての価値向上につながる。地域や街の価値を上げていくコンテンツ、アイテム、ツールをどのように提供していくかが問われている」と話す。

 三菱地所レジデンスの明嵐社長もこう語る。

 「日本の地方都市、近郊都市、首都圏近郊も含めてまだまだ磨けば光るところがたくさんある。ディベロッパーとして何が出来るか、行政と大掛かりに組むとか、実は今虎視眈々と頭の中で妄想している。不動産業の仕事は街の不動産価値を高め、そこに住む人たちを幸せにすることに尽きるのだから」

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