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酒場遺産 ▶136 広島薬研堀 中ちゃん 簡単で贅沢な一品「ウニクレソン」

住宅新報 2026年6月9日 号 13面

連載: 酒場遺産

総合
酒場遺産 ▶136 広島薬研堀 中ちゃん 簡単で贅沢な一品「ウニクレソン」

 「ディープな広島ならここ」と、広島出身の酒友に促されるまま、宿泊先のホテルから夜の平和大通り、袋町公園、八丁堀へと歩いた。辿り着いたのは薬研堀・流川エリアだ。そこに、年季の入った佇まいの鉄板焼き屋「中ちゃん」がある。昭和45(1970)年の創業から半世紀以上。店名は先代店主、中迫守氏の愛称(中ちゃん)に由来する。

 横長の暖簾が掛かるアルミサッシュの引き戸を開けると、目の前に大きな鉄板カウンターが広がっていた。友人によれば、かつては十人も入れば満席の長屋だったというが、現在は四十席ほどに拡張されている。カウンターでラガービールを飲みつつ、鉄板焼きをハーフサイズでいくつか品定めする。 名物の「ウニクレソン」は、ウニとクレソンを鉄板の上で、バター醤油で手早く炒めたものだ。簡潔な調理法だが、贅沢な逸品だった。締めに頼んだお好み焼きも極上だった。

 「中ちゃん」のある「薬研堀」の名は、かつての広島城の外濠が、漢方薬をすり潰「薬研(やげん)」のようにV字型に深く掘られていたことに由来するという。戦後の復興期、屋台群や闇市をルーツとして、中四国最大の歓楽街へと発展した。このエリアにおいて「中ちゃん」は、フレンチをルーツに持つ鉄板酒場という稀有(けう)な成り立ちである。

 創業者の中迫守氏(中ちゃん)は、フレンチの料理人として修行したが、今は2代目店主の宇高氏が暖簾を守っている。ウニクレソンの他にも、鉄板でシンプルに焼き上げる穴子や小鰯などの旬の食材も美味しい。そして広島の地酒が料理を引き立てる。

 場所柄だろうか、観光客、仕事帰りの会社員、同伴前のホステス、長年通う隠居の旦那衆など、実に多様な人たちが訪れる。広島独特の「濃いめ」の人と空気に浸りつつ夜は更けていった。(似内志朗)

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