不動産取引現場での意外な誤解 売買編263 相続開始後10年経ったら遺産分割はどうなる?
住宅新報 2026年6月9日 号 13面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回(第262回)の記述では、令和5年4月1日から施行された民法・不動産登記法の改正で最も重要な点は、相続開始10年経過後は、家庭裁判所での「特別受益」と「寄与分」の主張ができなくなったことだということでした。
A.その通りです(民法904条の3)。もちろん、10年経過後であっても、共同相続人間の話し合いで遺産分割の協議がまとまるのであれば何ら問題はないのですが、それができないために家庭裁判所にそのための審判を求めるということになると、この民法904条の3の規定によって特別受益等の主張ができなくなるということです。
Q.そうすると、例えば10年経過前から話し合いはしていたが、話し合いがまとまらなかったために10年が経過したという場合にはどうなるのでしょうか。
A.そのような場合には、次の2つのケースが考えられます。その1つは、10年経過前の段階から遺産分割の審判や調停の申立てをしていた場合で、その場合には民法904条の3第1号の規定によって、その申立てが例外として認められます。もう1つは、やむを得ない事情があって10年が経過してしまうケースで、この場合も例外として認められるのですが、この場合には、そのやむを得ない事情が10年経過前「6か月以内」に生じたものでなければなりませんので、その点の注意が必要になります(同904条の3第2号)。
Q.そうなると、10年経過後に家庭裁判所で共同相続人間で新たな遺産分割の合意をすることもあると思いますが。
A.10年経過後であっても、共同相続人間で「特別受益」や「寄与分」についての話がまとまり、遺産分割協議が成立するのであれば、それは当事者間の合意として当然に認められますので、そのような場合の家庭裁判所での審判はあり得ると思います。しかし、その場合に注意が必要なのは、その特別受益や寄与分についての合意の成立が10年経過する前のことで、それをもとに遺産分割をするのが10年経過後という場合には、「10年」という期間制限の意義がなくなりますので、そのような場合の10年経過後の審判は認められないと考えられます(「Q&A令和3年改正民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法」きんざい)。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















