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社説 業界のマネロン対策に厳しい視線 「届け出」徹底へ官民全力を

住宅新報 2026年6月9日 号 2面

連載: 社説「住宅新報の提言」

総合
社説 業界のマネロン対策に厳しい視線 「届け出」徹底へ官民全力を

 政府が近年、宅地建物取引業者に対しマネーロンダリング(マネロン)対策の徹底を強く呼び掛けている。犯罪収益移転防止法により宅建業者には「疑わしい取引の届け出」(以下、届け出)等が義務付けられているが、宅建業界の対応は不十分と言わざるを得ないのが実情だ。事業者側にも事情はあれど、法令や社会的責務を軽んじるかのように見える現状は、業界の未来を狭める危険性が大きい。そして国も、業界の持続的な発展を支えるため、あえて一層強い姿勢を示す必要がある。

 不動産業界に対する国の動きとして、国土交通省や金融庁等は昨年来、主要団体に同法順守や暗号資産による取引への注意喚起を要請している。中央省庁による、こうした焦りにも似た働き掛けには理由がある。我が国は、2028年夏にマネロン等対策の国際的枠組み・FATF(金融活動作業部会)の審査を控える。そこで現在よりも低い判定を受ければ、国際的な金融取引の厳格化や投資への影響、取引制限にもつながる。いずれも、我が国の経済全体にとって大打撃となり得る。

 その審査における目下の懸念材料が、宅建業者による犯収法への対応実績というわけだ。24年の「届け出」実績は、金融機関等の約79万件に対し、宅建業者はわずか25件。警察庁は、不動産取引に関わる「疑わしい取引」はここ数年で1000件以上と推測しており、業界の対応には厳しい視線が注がれている。宅建業者の対応不足がFATFの低評価を招き、日本経済にブレーキをかけかねないという危機感からだ。

 この事実に、業界団体も既に問題意識を持ち、会員各社に対する働き掛けを強めている。関係者によると、ある程度の成果も見え始めているものの、まだとても十分とは言えない様子だ。

 一方で、業界の団体・事業者とも、政策や税制について行政に求めるものは多い。だが、経済全体のリスクとなりかねない業界の要望を、国が好意的に受け入れるだろうか。ルールを守らない者の言葉に、信用や説得力は宿りにくい。これは国だけではなく、未来の担い手確保への悪影響にもつながる。法令順守の意識が低い業界とみなされれば、求人内容は信用されず、魅力的な採用文句も空疎に響く。特に、中小規模の事業者でその傾向は強まるだろう。宅建事業者は現在、これまで以上に積極的な法令順守と義務への対応が求められていると自覚すべきだ。

 同時に、結果として、国の施策が心もとない面も否定できない。「届け出」の必要性を熟知する立場として、それを業界にもれなく浸透させるための手段はまだ大いにあるはずだ。マネロン対策は形式的で面倒なだけの手続きではなく、我が国経済に関わる事柄であり、業界及び各事業者の将来を守るための取り組みと心得て、官民の双方が改めて全力を尽くす必要がある。

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