大言小語 住まいの豊かさ
住宅新報 2026年6月9日 号 1面
連載: 大言小語

かつて日経平均株価が6万8000円を付ける日を、誰が思い描いただろう。バブル崩壊の後、日本経済は「失われた30年」と呼ばれ、5万円台でさえ遠い山の頂に見えた。だが市場は、時に人の記憶よりも早く景色を塗り替える。だが、数字が示す明るさの陰で、暮らしの実感はどこまで伴っているだろうか。
▼住宅・不動産市場も同じである。アベノミクス以降、地価は底を打ち、いまや不動産の取引価格はバブル期を上回る水準にある。東京23区でマンションや戸建てを買うことは、普通の勤労世帯にとって容易ではなくなった。それでも市場には、ペアローン、残価設定ローン、最長50年ローンと、購入を後押しする仕組みが次々と並ぶ。もちろん、住まいを持ちたいという願いは尊い。だが、買った後の暮らしが重荷になっては本末転倒である。不動産会社に求められるのは、単に売ることではない。購入者の将来にまで目を配る姿勢であろう。「売ってしまえば後は購入者と銀行の問題」という古い印象を、業界全体で拭い去る必要がある。
▼住宅価格は高くなりすぎた。そんな声が、不動産事業者の側からも聞こえ始めている。ならば今こそ、住まいを「商品」としてだけでなく、「生活の土台」として見つめ直す時ではないか。株価や地価がどれほど高くなっても、人が安心して暮らせる場所が遠のいては、豊かさとは呼べまい。






















