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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇227 人生100年時代と住まい 不確実性支える基盤 老後の孤立防止策も

住宅新報 2026年6月2日 号 13面

連載: 彼方の空

総合
  • 彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇227 人生100年時代と住まい 不確実性支える基盤 老後の孤立防止策も

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  • 「人生100年時代」の住まい選びを間違えれば、今後も空き家増加は加速していく懸念が強い

    2 / 2「人生100年時代」の住まい選びを間違えれば、今後も空き家増加は加速していく懸念が強い

 〝人生100年時代〟を生き抜くには住まいについての深い洞察が必要になる。平均寿命が60~70歳ぐらいだった頃はライフステージも結婚→子育て→定年と単純だった。その後、男性は長くても15年程度で人生を終えた。しかし、これからの老後は30~40年続く可能性がある。人によっては現役時代より長い老後が待っている。

 当然、住まいに関する計画(思想)も大きく変わってくる。といっても単に〝長く住める家を〟という話ではない。人生のありようそのものが大きく変容している。単身期間の長期化、増える生涯独身、共働き前提の結婚・子育て、短期離婚の日常化、親の介護、自身の老後長期化(老後資金問題)とそのライフステージはめまぐるしく変化する。

 そのため、若い年代で生涯の住まいを決めてしまうことは大きなリスクをはらむ。ライフステージの変化に応じて住まいを柔軟に適応させていく知恵と計画性こそ長い人生を生き抜くためのスキルとなる。転職など自ら生活スタイルを大きく変えようとするときも、病気や事故など予期せぬ出費に迫られるときも、住み替えや資金化が容易な住まいを確保しておかなければならない。いつでも売りやすい、貸しやすいという流動性が重要になる。

資産か消費か

 住宅は資産か消費か――。どちらかに割り切るしかないのもこれからの住まい選びの宿命となる。売りやすい、貸しやすいということは資産性があるということだから、立地の良さ、スタンダードな間取りやデザインを重視するしかない。しかし、「一生に一度の買い物だから好きな住まいに住み続ける」という覚悟も捨てがたい。ただ、最近の若い世代の間では「住みたい家」よりも「資産として機能する家」をより重視する傾向が強まっていることは確かなようだ。

 住まい選びの最近の傾向としてもう一つあるのが「維持費」への関心である。いずれ住み替えは余儀なくされるとしても、それまでの維持費はなるべく抑えたいという意識が強まっている。高い断熱性能と省エネ設備、太陽光発電などを組み合わせて年間のエネルギー消費量の収支をおおむねゼロにすることを目指したZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の人気もその表れだ。マンション選びでは見た目の豪華さではなく、修繕積立金や管理費の上昇問題への関心が強まっている。

所有か環境か

 これからの住まい計画における最大のテーマは〝所有か環境か〟である。当然ながら人生100年時代では「持ち家が最適解」とは必ずしも言えなくなっている。なぜなら人生の不確実性が強まっているからである。住宅ローン一つとっても、所得の右肩上がり、大企業は大樹の陰とはもはや言えない。日本の国力(潜在成長率)自体が危ぶまれる時代である。

 加えて、「老後の孤立」という暗い問題が日本の未来を不安にする。ローンを完済した持ち家があれば安心というわけにもいかなくなっている。人間は経済基盤だけで生きていけるわけではない。年を取れば取るほど人の助け、見守り、交流、コミュニティ、心の基盤が必要になる。日本の地域社会は一部の例外を除けば疲弊の一途をたどっている。

 人間的交流が希薄な社会で、閉鎖的な持ち家に高齢者が一人で暮らすことはむしろリスクの増幅になる。介護状態が深まり最終的には施設に移るとしても、その前段階における高齢者の住まいはどうあるべきかという議論が日本は欠けている。良質な住環境を最も必要にしているのは高齢者である。

 改めて、人生100年時代の住まいは単なる箱であってはならないという認識が重要だ。必要なのは「社会との接点」である。つまりこれからの住まいは「私的空間」から「社会インフラ」へと変わっていくべきである。

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