古民家宿の物語 日本全国リノベーション 136 成木の杜(中) 癒さる空間づくりは、オーナーの想いが詰まっている
住宅新報 2026年5月26日 号 11面

黒い壁は、素材にこだわり深い味わいだ
場の空気感を豊かに
施工前の細かく区切られていた間取りを大胆に見直し、畳や壁を取り払うことで、大人数でも身体を動かせるワンフロア空間へと再構成している。ヨガやワークショップ、合宿利用などを想定し、用途を限定しない柔軟な場とした点が特徴だ。
一方で、空間の質を大きく左右する素材選びには徹底したこだわりが見られる。特に象徴的なのが、黒を基調とした壁面である。麻や炭、更には墨を混ぜ込むことで深みのある黒を実現しており、光とのコントラストによって独特の静けさと落ち着きを生み出している。こうした仕上げは手間もコストも掛かるが、「説明しなければ気づかれない部分にこそ価値がある」と、妥協せずに作り込まれた。
更に床下には大量の炭を敷設している。これらは単なる調湿・消臭といった機能面にとどまらず、「空間の波動を整える」というオーナーの山本さんの考えに基づくものだ。セラピストとしての経験から、目に見えない空気感や居心地が人に与える影響を重視し、「いるだけで心身が整う場」を目指した。
水回りの機能向上
浴室は、もともと味噌蔵として使われていた空間を活用したものだ。既存の梁(はり)や建具を残しながら、大型の浴槽を設置し、複数人での利用にも対応。照明はあえて抑え、間接光によって非日常的な落ち着きを演出している。古材の持つ時間の蓄積と、新たな機能が融合した空間だ。
トイレは一般的な設備としてではなく、「場の循環の一部」として位置づけられている。浄化の仕組みを含めた独自の設計が施されている。
地元産にこだわる
また、建材や家具には地元の事業者の協力を積極的に取り入れている。地元林業による木材、地域の家具職人による造作などを通じて、施設の完成が地域経済の循環にもつながる点も特徴的だ。
資材価格の高騰などの影響もあり、当初の仕様からの見直しも行われた。床暖房や設備の一部を削減するなどの調整を経ながらも、「空間の本質に関わる部分は守る」という判断のもと、優先順位を明確にして完成へと至っている。
宿=成木の杜
住所=東京都青梅市成木7丁目
ウリ=自然環境と建物に癒されるリトリートの空間






















