社説 流通しない不動産の時代 役割広げ 市場を動かせ
住宅新報 2026年5月26日 号 2面
連載: 社説「住宅新報の提言」

流通各社へのアンケート調査によると、2025年度の不動産売買仲介市場は総じて堅調に推移した。都心部や高額帯を中心に取引は活発で、二拠点居住や外国人需要など新たな動きも広がっている。だが、不動産市場が堅調に見える今こそ、「流通しない不動産」に向き合う視点が求められている。地方や郊外では空き家が増え、売却も賃貸も難しいストックが確実に積み上がっているためだ。市場が動く領域と、動かない領域の分断は一段と鮮明になっている。
この領域に誰が向き合うのか。仲介業者は流通を担うが、取り扱いが難しい物件には対応しきれない。行政はセーフティネットとしての役割を果たすが、個別案件への関与には限界がある。近年はコンサルティングや地域再生に取り組む事業者も現れ、空き家の活用や再生に挑む動きも見られるが、広がりはなお途上にある。
足元の市場を見れば、好調の裏側で不安要素も積み上がっている。金利上昇や物件価格の高騰、ローンの長期化などにより、取引は一部の購入可能層に依存する傾向も強まっている。市場が成立しているように見えても、その持続性には揺らぎがある。こうした状況下で、流通しない不動産に向き合う取り組みは、単なる社会課題対応にとどまらず、事業の安定性を補完する意味も持つ。
不動産コンサルティングを巡る議論も進みつつある。空き家対策や相続対応への期待が高まる一方、報酬や業務範囲の整理はなお検討段階だ。行政による後押しも進むが、具体的な役割分担や持続的な事業モデルは模索が続く。方向性は示されたものの、実装に向けた議論はこれからが本番と言える。一方で、流通しない不動産に向き合う実践も現れ始めている。空き家の活用も含め、企画や事業設計を担う主体が初期段階の仕掛けをつくり、その後は地元の担い手や金融機関へと関与を移していく。関係主体が段階ごとに役割を分担することで、単発に終わらない持続的な再生が可能となる。個別の事業者が全てを担うのではなく、関与する主体を段階ごとに分担することで、停滞していた不動産を面的に動かしていく発想となる。
流通しない不動産への対応は、市場の拡大というより、地域や生活基盤の維持に関わる問題だ。利益だけでは測れない領域である一方、持続させるには事業として成立させる必要もある。
市場の内側だけでなく、その外側にある課題へ目を向け、役割分担を再設計すべき段階に来ている。それは社会課題への対応であると同時に、事業の持続性を高める選択でもある。構造の壁を理由に立ち止まるのではなく、現場から関与の仕組みを組み替えていく必要がある。不動産が誰のために機能するのか。その原点に立ち返り、流通の枠を超えた取り組みを業界全体で広げていくべきだ。


























