大言小語 スマートロック
住宅新報 2026年5月26日 号 1面
連載: 大言小語

横浜地方裁判所で5月14日、ある判決が下された。横浜市に対し、玄関扉の交換費用などに約25万円を支払うよう命じた。救急隊員が駆け付けた際、施錠された玄関扉を破壊したことを巡り、マンションのオーナー側が損害賠償を求めていた。
▼当時、新型コロナウイルスで自宅療養中の居住者について親族から「連絡がつかない」と通報が入った。不動産管理会社にも連絡が取れず、親族の承諾を得て扉を破壊し、室内へ立ち入った。だが、居住者は不在だった。
▼消防法29条1項は、消火や人命救助で必要がある場合、消防職員らは、土地や建物を「使用・処分・制限」できると定める。今回の判決は、条文が想定するのは火災などで、新型コロナの疾病対応までも含むとは言えないと判示した。
▼単身高齢者の増加、孤独死リスク、感染症対応――。都市生活では、緊急時に「中で何が起きているのかが分からない」事態が珍しくなくなった。不動産管理の現場でも、安否確認は日常化しつつある。しかし、人命救助の必要性があっても、扉を無理に開けると賠償責任を負うとなれば、現場は萎縮しかねない。
▼私権保護は当然重要ではあるが、高齢化と単身世帯化が進む中、救命のための初動が萎縮する社会でよいのか。スマートロックや遠隔解錠システムの導入は、一つの解決策になる。だが、本質的には、緊急時の権限の範囲を社会全体で見直す時期に来ているのかもしれない。






















