古民家宿の物語 日本全国リノベーション 135 成木の杜(上) 資金も経験もない中で――出会いが導いた古民家再生
住宅新報 2026年5月19日 号 11面

山間の斜面に建つ宿は、赤い暖簾で出迎える
リトリートの「場」を構想
代表の山本竜子さんは、もともと東京・三鷹で、アロマセラピーや気功を中心としたサロンを運営している。自身の体調不良や家庭環境の変化をきっかけに、心身の不調と向き合う中で、さまざまな療法や理論を学び回復していった経験を持つ。その過程で強く実感したのが、「人を整えるのは施術だけではなく、環境そのものではないか」という視点だ。
この感覚を決定づけたのが、趣味として続けていた古民家巡りである。古民家カフェなどを訪れる中で、単なる〝古い建物〟と、〝新たな息吹が吹き込まれた古民家〟では、滞在時の感覚がまったく異なる。古いものと新しいものが融合したときに生まれる場の力。その中に身を置くことで、人の状態そのものが変わる。この体感が、「場によって人は整う」という確信へと変わっていった。そして、心身を整える〝リトリートの場〟をつくりたいという構想が生まれる。
言葉の力で出会いが生まれ
しかし当初は、資金も不動産の知識も、事業経験もなかった。あるのは構想だけだったという。それでも「言葉には力がある」と考え、周囲に語り続けた。「古民家でリトリート施設をつくりたい」と、知人や関係者に繰り返し伝えていく中で、少しずつ人のつながりが広がっていく。
そうした中で出会ったのが、山梨を拠点に古民家宿を展開する「るうふ」である。同社が青梅に保有していた未活用物件の存在を紹介された。
想いが具体化していく
この計画を現実のものとした大きな要因が、事業再構築補助金の活用である。中小企業診断士の協力を得て事業計画を策定し、補助金の採択を受けたことで、リノベーション費用の大部分を確保することができた。さらに「るうふ」が物件を保有し、山本さんの会社が改修・運営を担うというスキームにより、山本さんは初期投資のハードルを下げながら事業化を実現している。
構想を語り続けたこと、人との縁がつながったこと、制度を活用したこと――それらが重なり、プロジェクトは一気に具体化した。
宿=成木の杜
住所=東京都青梅市成木7丁目
ウリ=自然環境と建物に癒されるリトリートの空間






















