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プレミアム会員限定不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編259 共同相続した賃貸物件の値上げはどう行う?

住宅新報 2026年5月12日 号 15面

連載: 不動産取引現場での意外な誤解

総合
不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編259 共同相続した賃貸物件の値上げはどう行う?

Q.賃貸借契約においては、貸主・借主ともに賃料の増減請求権を有するとされていますが(借地借家法11条、32条)、この規定は、共有の相続物件の賃料の値上げの場合にも適用されるのでしょうか。

A.当然に適用されます。しかし、賃料の増減は、通常は当事者間の合意で決められますので、この借地借家法の規定に基づいて決められるのは、極く僅かでしかありません。なぜなら、この規定は、当事者間で意見が合わず、どうしても合意できないような場合に、やむを得ず裁判所の手を借りて決めるという規定だからです。

Q.ということは、共有の相続物件であっても、賃料の値上げは一応はできるということですね。

A.そういうことです。ただ、ここで注意をしなければならないことは、「共同相続」した物件の値上げということになると、その値上げは、共有物の「管理行為」として共有持分の過半数の同意がないと有効なものにはならないということです(東京地判平成28年5月25日)。したがって、田舎にある父親の遺産(土地・建物)を同じ田舎に住んでいる相続人が単独で賃貸したり、賃料の値上げをするというようなことがよくありますが、これは正しいやり方ではありません。

Q.そうすると、同じようなことは、例えば借主の方に「共同相続」が生じ、地主がその共有の借地の地代を値上げしたい場合にも生じるのではありませんか。

A.その通りです。そのような場合にも、借地人である共同相続人全員の同意がない限り、有効な値上げはできません(最判昭和50年10月2日、最判昭和54年1月19日)。ということは、逆に言えば、共有物の賃貸人が賃料の減額をする場合にも、共有者全員の同意がなければ減額できないということです(東京地判平成14年7月16日)。

 このような判例の考え方は、共有物の賃貸について、賃貸すること自体が共有物の使用収益を制約するものであることから、借地借家法の適用を受ける賃貸借をする場合には、「処分行為」としての共有者全員の同意が必要だというところにあるのですが(東京地判昭和39年9月26日)、同じように共有物の賃料の減額についても、「不利益行為」として共有者全員の同意が必要だとしているのです。

渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男

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