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酒場遺産 ▶130 浅草 翁そば 客の8割が注文、名物「カレー南ばん」

住宅新報 2026年4月21日 号 17面

連載: 酒場遺産

総合
酒場遺産 ▶130 浅草 翁そば 客の8割が注文、名物「カレー南ばん」

 大正3年(1914年)創業、110年以上の歴史を誇る浅草「翁そば」は、古くから浅草の地で多くの人々に親しまれてきた蕎麦屋である。浅草の大通りから一本入った路地に面しており、本連載46話で紹介した「水口食堂」の隣である。現在の店は昭和25年(1950年)に、戦後の物資不足の中で二代目が再建したという。すりガラスの格子戸、白い木綿の暖簾、年季の入った看板、使い込まれた木製テーブル。そして年季の入った短冊メニューが貼られた店内は、昭和の空気感そのままである。現在は4代目の店主ご夫婦を中心にで切り盛りされている。「あいよっ!」「カレーひとつ!」、女将さんの声が響く。

 「酒場遺産」として取り上げたが、酒はキリンラガーのみ。それでも、蕎麦を食べつつ飲むラガーは最高なのである。そして「翁そば」の名物は何と言っても「カレー南ばん」であり、客の8割が注文するという。太めの蕎麦とトロトロの濃厚カレースープの取り合わせがいい。丼ぶりになみなみと注がれた粘度の高いカレースープは、表面張力でこぼれそうなほどだ。スパイシーで辛口だが、出汁が効いている。これがラガーと相性がいいのだ。そして、蕎麦としては珍しい極太の平打ち麺(うどんほどの太さ)。コシを楽しむというよりは、モッチリとした食感だ。周りを見れば、みなカレー蕎麦を頼んでいた。この店では、カレー南ばんが800円と一番高く、あんかけ、おかめとじ、親子南ばん、かしわ南ばん、かきたま、力、花まきなど続き、きつね、たぬき、ざる、かけ、もりは500〜600円と手頃な価格だ。

 かつてこの一帯は、明治16年(1883年)、浅草寺の境内地が浅草公園として整備され、翁そばに近い浅草六区は、明治から大正にかけて映画館、オペラ、軽演劇がひしめく日本最大の興行街だった。そして「翁そば」の面する路地は、華やかな六区表通りと対照的な「裏(楽屋裏)」としての性格があったという。興行の合間に、芸人や裏方たちが手早く腹を満たすため、翁そばの「安くてたっぷり」に繋がっているとか。(似内志朗)

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