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プレミアム会員限定古民家宿の物語 日本全国リノベーション 133 柚子の家(中) 歴史と風景に導かれた出会いと、大規模リノベーション

住宅新報 2026年4月21日 号 17面

連載: 古民家宿の物語 日本全国リノベーション

総合
大きなソファから自然豊かな谷の眺望を楽しめる

大きなソファから自然豊かな谷の眺望を楽しめる

谷の眺望が決め手に

 集落には祠(ほこら)やお地蔵が点在し、代々大切に守られてきた信仰と暮らしの歴史が息づいている。単なる山間の集落ではなく、人の営みと祈りが積み重なってきた場所であることが感じられる。こうした背景を持つ地域に宿を開くに当たり、桑原さんは住民との関係にも細やかな配慮を重ねてきた。外から人を呼び込む事業である以上、地域との調和が不可欠であり、その積み重ねが運営を支えている。

 紹介を受けて現地を訪れた際、桑原さんは「このロケーションは宝だ」と直感したという。建物自体も大きく、古民家としては希少な規模を持っていた。購入の決め手となったのは、谷に向かって開けた眺望だった。ソファをその方向に配置し、室内にいながらも自然と対話できる空間を構想した。

数千万円規模の投資に

 宿泊施設として再生するには大規模な改修が必要だった。前の所有者が亡くなった後、長期間放置されていたため、室内には多くの残置物があり、その整理から始めなければならなかった。リノベーションには数千万円規模の費用が掛かり、断熱性能の向上や水回りの刷新など、見えない部分にも大きな投資が行われた。

 設計にはデザイナーを起用し、「古民家らしさを残しつつ、現代でも快適に過ごせる空間」を目指した。低い梁(はり)や構造はそのまま生かしつつ、二重サッシや断熱材を導入し、標高400メートルの寒暖差にも対応できる仕様とした。かつて囲炉裏があった場所にはテーブルを配置し、「現代版の囲炉裏」として人が集う中心を再構築している。

現代と歴史をつなぐ

 また、藤野は「アートのまち」としても知られる地域である。その文化的背景を象徴するように、建物内には巨大なカゴの作品が展示されている。古民家の重厚な梁と、現代アートの軽やかな存在が共存する空間は、この地域ならではの個性を体現している。

 築200年とも言われる建物は、単なる宿泊施設ではなく、歴史と現代、そして風景を体感する装置として再生された。古さを残すのではなく、「生かす」。その思想が、空間全体に息づいている。

宿=柚子の家

住所=相模原市緑区牧野

ウリ=山奥の景観を都心からアクセス良好な藤野で満喫

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