不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編256 建物賃貸借契約での固定賃料特約は有効か?
住宅新報 2026年4月14日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.このたび、ある店舗ビルの賃貸借の仲介をするのですが、借主側から10年間は賃料を固定して欲しいという要望が出ています。このような場合には、どのような点を注意して特約したらよいでしょうか。
A.1つの考え方としては、例えば契約期間が3年で、更新料が賃料の1か月分の場合、2回の契約更新(9年間)までは同一賃料とし、その間は事情のいかんにかかわらず、貸主からの賃料の増額請求をしないという特約をするということです。もちろん、その際の賃料の額は市場動向を勘案し、双方が納得できる額で仲介することにはなりますが、ここで1つ注意をしなければならないことは、その特約の中に、借主からの「賃料減額請求もしない」という文言を入れてはならないということです。なぜならば、そのような特約は借地借家法の規定(借賃増減請求権=32条(1))により無効とされるため、却って誤解を招き、トラブルに発展しかねないからです。
Q.そうすると、貸主からの賃料の増額請求をしないという特約は有効であるが、借主からの減額請求をしないという特約は無効だということですね。
A.その通りです。借地借家法は、その32条(1)(借賃増減請求権)の「ただし書き」で、次のように定めているからです。
「ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」
Q.ということは、このような借主にとって不利な特約が無効になるという規定は「土地」の賃貸借の場合にもあるということですね。
A.その通りです(借地借家法11条)。この同法11条の規定には、「地代等増減請求権」という見出しで、建物賃貸借の場合と同じように、次のように定められているからです。
「地代又は土地の借賃(以下「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件かかわらず、当事者は、将来に向って地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















