大言小語 異常行動する猫
住宅新報 2026年4月14日 号 1面
連載: 大言小語

道端で異常行動をした猫が最初の警告だった。熊本で発生した「水俣病」は〝公式確認〟から5月1日で70年を迎える。予兆が見過ごされ、原因の特定が遅れた背景には、経済合理性や企業城下町としての依存構造の中で揺れた住民の利害もあった。被害は、地域全体に広がった。
▼水俣病を扱った1000ページを超える『苦海浄土(全三部)/石牟礼道子著』(藤原書店刊)を読み終えた。企業と行政、国による因果関係の否認、補償を受けた被害者へのねたみや偏見。やりきれなさを覚える。問題は、環境汚染に加え、高度経済成長の工業発展の陰で、地域社会と生活基盤に深刻な犠牲を強いた構造にある。
▼事業か環境か――。企業と行政、国の既得権益や、いわゆるサンクコストを意識して操業停止を判断せず、有機水銀を含む工場排水を垂れ流し続けた。誰が利益を得て、誰がリスクを負うのか。地域の価値を毀損する「負の外部性」を適切に管理しなかった構造的問題を浮き彫りにさせた。
▼見えにくい負のコストは、長期的に立地に固定された形で周囲や社会全体に転嫁される。現代の不動産開発も、短期的な収益や都市活性化が優先され、分譲価格に十分に織り込まれないリスクが存在する。空き家問題に加え、長期修繕費不足や管理組合の機能不全、地域コミュニティー分断、将来に修復困難な課題を積み増す恐れがある。次世代や地域社会に負担を先送りする構造が内在している。






















