不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編255 競売で自殺・他殺・変死はどのように扱われる?
住宅新報 2026年4月7日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回は、競売物件を取得するときの注意点として、民法568条(4)の規定(競売における担保責任不適用の規定)を裁判所がどう判断しているか聞きましたが、「自殺物件」については、どちらかといえば担保責任を認めているように思えましたが。
A.そうではありません。確かに、紹介した事例の多くは、その競売物件である建物の中あるいは軒先などでの自殺というケースでしたから、売却許可の取消しが多くなっていたのですが、同じような建物の敷地内の自殺であっても、その痕跡がないようなケースにおいては、自殺が競売手続に影響を与えるものではないとした事例もありますので、注意が必要です(東京高決平成8年8月7日)。
Q.そうすると、同じ自殺であっても、建物の敷地外であるとか、病死(変死)のような場合には、債務者(所有者)に責任追及ができるということですか。
A.責任追及といっても、それはその物件の評価額(売却基準価格)が下がるということですから、結果的には、その負担を債務者(所有者)がするという点ではいずれも同じことなのかもしれません。
その具体的な例としては、共有者の1人が物件から約200メートル以上離れた山林内で発見された自殺事案(仙台高決平成8年3月5日)や、建物内で病死し3か月間放置された変死事案(東京地決平成14年6月18日)などがあります。
Q.であれば、「他殺物件」の場合には間違いなく売却許可が取り消されますね。
A.そう思います。具体的には、建物内での4件の殺人事件があった事案(新潟地決平成4年3月10日)と、建物内で暴力団員によるリンチ殺人事件があった事案(仙台地決昭和61年8月1日)が挙げられます。
しかし他方で、都心部の「商業ビル」内で発生した放火殺人事件については、売却許可決定の取消しが認められませんでした(東京高決平成14年2月15日)。その理由は、入札者が放火殺人事件があったことを承知の上で入札を申し出ており、しかも、その多くが不動産会社であったことと、本件建物が典型的な商業ビルで居住用でないことから、社会通念上本件放火殺人事件が本件不動産の交換価値を著しく損傷させたと認めることはできないというものでした。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















