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酒場遺産 ▶127 溝の口駅西口商店街 かとりや 酒に合う素朴な品が並ぶ

住宅新報 2026年3月31日 号 17面

連載: 酒場遺産

総合
酒場遺産 ▶127 溝の口駅西口商店街 かとりや 酒に合う素朴な品が並ぶ

 先週紹介した「いろは」の隣にある「かとりや」は、1963年創業の精肉店をルーツとする老舗酒場である。酒は群馬県・井田酒造「胡月」が人気のようだが、麦酒(赤星)、サワー、ハイボール、焼酎などの定番も揃う。串焼きは、カシラ、ハラミ、タン、ハツ、シロ、レバー、コブクロ、ナンコツ、砂肝、とり皮、ねぎま、ししとう、ピーマン、ねぎが1串150円、「特製串焼き」の豚バラ串(200円)、つくね(220円)、牛大串(500円)なども美味い。卓上のピリ辛味噌をつけて食べるのがこの店のスタイル。「お豆腐屋さんの厚揚」やガツの酢漬け「かとりや漬け」などの酒に合う素朴な品が並ぶ。

 溝の口駅西口商店街には、「かとりや」「いろは」の他にも、1967年創業「大衆酒場 玉井本店」など、個性的な老舗酒場が並ぶ。戦後の混乱を経て、日本が高度経済成長期に入る時期に、これらの店は生まれた。溝の口駅周辺には西口商店街以外にも古い酒場が点在する。洗練された新興住宅地を通る東急田園都市線沿線にありながら、この街を特徴づけているのはJR南武線の存在だろう。南北で文化的土壌が異なる川崎市を貫き、多摩川沿いを走る南武線は、かつて多摩川の砂利や奥多摩の石灰石を川崎の臨海工業地帯へ運ぶ貨物輸送から始まり、戦後は工場群へ向かう労働者の足となった。高架の東急線ホームから見下ろせば、南武線の線路際にへばりつくように並ぶ西口商店街のトタン屋根は、そうした時代の記憶を蘇らせる。

 溝の口駅に限らず、登戸(小田急)、武蔵小杉(東急)など、南武線が私鉄と交差する結節点には、土着的な空気感が漂う。そして、溝の口は「大山街道」の宿場町でもある。古くからの街道筋(旧道)、戦後の闇市(西口)、そして現代の再開発(東口)が、数百メートルのエリアに重なるこの町は魅力的だ。 (似内志朗)

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