彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇219 シンポ「思想なきマンション」 住まいとはなにか―― 5月開催・住文化研 増え続ける分譲マンションストック
住宅新報 2026年3月31日 号 17面
連載: 彼方の空

一般財団法人 ひと・住文化研究所(鈴木静雄代表)は5月13日、同研究所が昨年10月に出版した『思想なきマンション』の出版記念シンポジウムを開く。23年9月に出版した『住文化創造』に続く第2弾。今回は建設・住宅業界に対するかなりハードな問題提起が盛り込まれている。
本のサブタイトルには「(思想なきマンションは)家族を滅ぼし、地域を分断し、やがて日本を滅ぼす」とあり、帯には「コンクリート住宅は生死に関わる問題を抱えている。その処方箋を本書が説き明かす」とある。不動産業界ではあまり見掛けないテーマだが、どんな議論が展開されるのだろうか。
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シンポジウムは『思想なきマンション』の共同執筆者でもある鈴木代表の挨拶、同じく共同執筆者の船瀬俊介氏による基調講演「日本の建築・住宅業界のタブーに切り込む」、そしてパネルディスカッションと進む。鈴木代表は本の「はじめに」でこう記す。「日本では今、毎日のように得体の知れない様々な社会問題が噴出している。たとえば、子供の非行や犯罪もその一つ。それらの原因の大半が住環境に起因していることを受け入れようとせず、日本人は人間性を失い、社会も腐敗している」と。
パネルディスカッションには鈴木、船瀬の両氏と本の推薦人の一人で日本医師会元副会長の今村聡氏が登壇する。今村氏は〝住まいと健康〟という視点から現在の日本の住まいに対する問題点を指摘するものと思われる。170年ほど前になるが、ナイチンゲールが病気の原因の半分は住環境の劣悪さが原因であると「看護覚書」に書き残していることは有名である。
住まいは思想
改めて思うに「住まいの思想」とはどんなものだろうか。国交省が2019年4月に公表した「新・不動産業ビジョン2030」では、住宅を「人生の大半を過ごす欠くことのできない生活の基盤」と定義している。住宅政策をつかさどる国交省が住宅を生活の拠点ではなく生活基盤とした意義は大きい。基盤というからには、生活の一部ではなく、その根底をなしているということになるからだ。
では生活の根底とはなにか。生活する人の思想や人格、人が生きていく上で価値観そのものでもある。
実は、住まいについて考察する現代的意義がそこにある。人間はなんのために生きているのか。幸福になるために生きているのだとすれば、幸福とは何かを明らかにし、どういう住まいが人間を幸福にするのかを考えなければならない。幸福と住まいの関係を解き明かすことが今の社会に求められている。
自分は住まいに何を求めているのか。住まい選びで成功するためには、まずその点を自らに深く問わなければならない。ただ、それがなんであれ、自分の思想、価値観を体現している住まいに出会えるとしたら、それはこの世における人生最高のロマンとなる。住まいは一生に一度だから大切なのではなく、ましてや人生で最も高い買い物だから大切なのではない。住まいがその人の思想を体現し、心のよりどころとなって、生きる力を与えてくれる場所だからこそ大切なのである。そして、そのような住まいは住まいに対する深い思索を重ねている事業者でなければ造れるものではない。
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では、事業者が住まいに対する深い思索をもつためにはどうすればいいのだろうか。そのあたりのことがパネルディスカッションで議論されることを期待したい。シンポジウムの会場はJR池袋駅西口徒歩3分のホテルメトロポリタン4F「桜の間強」。開演は17時。参加者には『思想なきマンション』(定価1800円)が進呈される。参加費は1万円(飲食代込み)。
◆問い合わせは事務局電話03(6311)6381へ。
またはメール:masarutamahiro@livlan.com






















