ニュースが分かる! Q&A データセンター市場 AI需要で急拡大 5年で100GW新規供給、電力確保が最大課題
住宅新報 2026年3月24日 号 22面
連載: ニュースが分かる!Q&A

記者 データセンター市場が熱い視線を浴びています。人口減少に悩む不動産業界は、新たな事業領域として位置付け始めています。今後の展望をどう観測しますか。
JLL 世界のデータセンター市場は急速に拡大していきます。人工知能(AI)需要の急増を背景に、2030年までに現在の約2倍規模へ拡大するとの見通しです。26年から30年にかけて新たに約100ギガワット(GW)の供給が見込まれ、世界全体のデータセンター容量は200GWに達する可能性がありますね。マーケットは年平均14%で成長する一方、送電網のひっ迫や電力接続の遅れが深刻化しており、今後は「立地」よりも「電力を確保できるか」が事業成否を左右する時代に入っています。
成長をけん引するのはクラウドとAIでしょう。なかでも(5000台以上のサーバーを擁する)ハイパースケーラーと呼ばれる巨大IT企業群が、賃貸と自社開発を組み合わせた複合戦略で市場拡大の主役を担います。コロケーション(※)やBTS(ビルド・トゥ・スーツ)を含む賃貸型施設、自社保有型ハイパースケールのいずれも大幅な増加が見込まれる一方、従来型のオンプレミスは緩やかな縮小傾向が続きます。
記者 業界・業種を問わずAIが急速に仕事に浸透してきています。
JLL そのAIの使われ方も転換点を迎えます。25年時点ではデータセンターで行われる作業のうちAI関連は約4分の1にとどまり、その中心は学習用処理でありますが、27年には実運用を担う「推論」が学習を上回ると予測されます。これにより、大規模集中型の処理だけでなく、利用者に近い場所で低遅延に応答する地域分散型やエッジAI向け施設の需要が拡大するでしょう。
一方で、最大の制約要因として浮上しているのが電力になります。主要市場では送電網への接続待機が長期化しており、50メガワット(MW)規模の新規データセンターで平均4年超のリードタイムが発生している地域もあります。このため事業者は、敷地内での自家発電や蓄電池(BESS)の導入や、再生可能エネルギー発電設備への直接投資などを急いでいます。JLLでは、30年までに「太陽光+蓄電池」の組み合わせがデータセンターの主要なエネルギー戦略になるとみています。
記者 不動産ビジネス視点からデータセンターの収益性について教えてください。
JLL 需給のひっ迫は賃料にも波及します。世界のデータセンター平均賃料は30年まで年平均5%上昇する見通しで、特に南北アメリカは年平均7%の上昇が予測されています。その背景としては、AI投資の加速に加えて、空室率の低さと新規供給の制約が挙げられますね。世界全体の稼働率が97%、開発中案件の77%が事前契約済みである点を挙げ、「バブル」との懸念に対して、不動産市場としての基礎条件はなお堅調だと分析できます。
記者 データセンター開発における足元の課題を挙げてください。
JLL その課題は山積しています。設備調達の長期化や建設コストの上昇が続いており、25年には開発案件の57%で3カ月超の遅延が発生しました。26年の平均開発コストは1MW当たり1130万ドルに達する見込みで、液冷システム対応などAI向け高仕様化が一段とコストを押し上げるでしょう。こうした中で、工期短縮に寄与するモジュール型やマイクロデータセンターへの関心も高まっています。
記者 今後の投資市場としての規模は、どの程度まで拡大するとみていますか。
JLL 投資面では、データセンター市場が「スーパーサイクル」に入ったとの見方が強い。30年までに新規供給100GWの稼働に伴い、不動産価値として約1.2兆ドルが創出され、テナントの設備投資まで含めた関連総支出は最大3兆ドル規模に達すると試算します。
資金調達の手法も多様化し、ABS(資産担保証券)やCMBS(商業不動産ローン担保証券)など証券化市場の拡大が進むほか、成熟資産を対象にコアファンドへの資金流入も増えています。
(※)企業が所有するサーバーやネットワーク機器をデータセンター内のスペースに設置・運用するサービス






















