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酒場遺産 ▶126 溝の口駅西口商店街 いろは 一人客多い かつての酒場の姿

住宅新報 2026年3月24日 号 21面

連載: 酒場遺産

総合
酒場遺産 ▶126 溝の口駅西口商店街 いろは 一人客多い かつての酒場の姿

 再開発が進みビルが立ち並ぶ溝の口駅東口と対照的に、西口商店街には昭和の空気を色濃く残すバラック酒場が連なる。こうした場所に強く惹かれるのはシニア世代に限らない。客の多くは筆者より若い世代である。野毛やアメ横と比べれば小規模だが、焼き鳥の煙がもうもうと立ち昇るこのエリアは「酒呑みのためのテーマパーク」だ。

 歴史を遡れば、溝の口駅西口商店街は戦後混乱期に形成された闇市をルーツに持つ。交通の要衝であったことから、駅西口を中心に露店が立ち並び、食料品や日用品、酒などが売買されていた。やがて闇市は整理・再編され合法的な商店街へと姿を変えたが、狭い路地にひしめき合う店構えには、闇市時代の空気感が色濃く残っているという。2005年の火災で商店街の北側半分が焼失したが、再建されたエリアも旧来の風情を継承してつくられた。ここに集う人々は、均質で綺麗な「ハコ」を求めてはいない。

 商店街の奥、路地が分かれる三叉路に、三角平面の店舗を構える焼鳥「いろは」がある。戦後まもなく暖簾を掲げたというから、1950年代から60年頃の創業だろう。ひとり客の多いこの店は、かつての酒場の姿を想像させる。立呑カウンターでたまたま隣になった荒木さんという白髪の紳士と話をした。以前、たまプラーザに住んでいた頃は、毎日のようにこの酒場に立ち寄ったという。スマートな田園都市線とは異質の、ディープなこの商店街を愛しているという。氏は都内の酒場を相当数回っているらしく、筆者もよく立ち寄る浅草橋「酒寮むつみ屋」の常連だと言う。

 今夜頼んだ酒は、福島県の銘酒「会津ほまれ」と黒ホッピー。ナカの焼酎は一風変わった小瓶で供され、その瓶の数で会計をする。酒は日本酒のほか、サッポロラガー(赤星)、キリンラガー、芋焼酎、ハイボールなど一通り揃っている。串ものは、ねぎま、つくね、とりかわ、ナンコツ、カシラ、ハツ、シロ、レバー、タンなどが100円からと安い。煙が立ち昇る焼き場を囲む三角形のスペースは、不思議な魅力を湛えている。(似内志朗)

 

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