彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇218 東京など大都市は住宅不足 分譲価格高騰の日本 賃貸増やすフランス
住宅新報 2026年3月24日 号 21面
連載: 彼方の空
空き家が増えている日本では「住宅は余っている」というイメージが一般的だが、実は東京などの大都市は「住宅不足」と言わざるを得ない。その証拠に住宅価格と家賃がこれまでにないような上昇を示し、適切な住宅を見つけることができない若い世帯が増えている。首都圏の新築分譲マンションの供給戸数も今や2万3000戸台まで急落してきている。
新設住宅着工戸数を見ても25年は前年比6.5%減の74万667戸となり、62年ぶりの過去最低水準を記録した。利用関係別では持家、貸家、分譲住宅の全てで減少。貸家は昨年4月から今年1月まで10月を除き9カ月連続の減少だ。人件費や建築費の高騰が大きく影響していることは間違いなく、こうしたときこそ公的セクターによる供給や政府による思い切った補助政策がとられるべきではないだろうか。
200万戸を建設
参考になる住宅政策がフランスで実施されている。26年から30年までの5年間で200万戸(年間40万戸)の賃貸住宅を建設する計画だ。この供給戸数を人口比で単純計算すると日本の360万戸(年間72万戸)に相当する規模である。つまり日本も今、フランスと同程度の住宅建設がなされていることになる。それでも大都市での住宅不足解消につながっていないのはなぜか。それは日本で新規に供給されている住宅が分譲も持家も貸家も価格や賃料が高く、一般勤労世帯の所得水準では手に入らないものが大半だからである。供給と需要とのミスマッチが起きている。
その点、フランスでは政府による補助政策が実施されているので家賃の上昇を抑えることができている。その具体的内容はこうだ。補助の対象は、実は建設する事業者に対してではなく、建設された賃貸住宅を1戸以上購入して第三者に賃貸する個人である。 補助内容は、賃貸するために要する費用(維持管理費、修繕・改修費、ローン利息)が控除され、不動産税の減価償却も受けられる。補助額は8000~1万2000ユーロ。さらに賃貸時の赤字は1万700ユーロまで他の収入と相殺(所得減税)することができる。条件は最低9年間家族以外(3親等以上)に住居として賃貸することである。
フランスの住宅政策に詳しいジャーナリストの広岡裕児氏によると、例えば夫婦で18万ユーロ(約3400万円)の物件を自己資金3万ユーロ、ローン15万ユーロで購入すると10年後には賃貸収入への課税はゼロ、所得税16000ユーロが節税できるという。
なぜ、事業者ではなく個人を対象にしているかというと、この住宅建設計画が住宅不足解消を目的にしているだけでなく、個人の資産形成、将来の年金補填をも目的にしているからである。賃貸住宅を資産として持てば、将来の資産形成が可能になるという考え方である。ちなみに住宅不足に陥った要因はコロナ下での住宅建設の減少である。
不動産好き
フランス人は日本人以上に〝不動産好き〟である。フランスにおける個人資産の内訳を見ると不動産55%、投資的金融資産19%、預金13%、その他13%で圧倒的に不動産の占める割合が大きい。日本人も不動産好きというイメージがあるが、日本の個人資産に占める不動産の比率は36%にとどまっている。フランス国民は株などよりも不動産を資産の中核と捉えている。
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日本の住宅政策は依然として持家取得優先だが、そろそろ賃貸住宅に軸足を移すべきではないだろうか。国を挙げてアフォーダブル住宅の建設を増やすときである。フランスの賃貸住宅には普通の所得の人が入る「中間住宅」、その下の人が入る「社会住宅」、さらにその下の人向けの「非常社会住宅」という3つのタイプがあるが、今回建設される200万戸もほどよく配分されている。
























