古民家宿の物語 日本全国リノベーション 130 秩父定峰清流キャンプ場 古民家ゲストハウス(中) 〝泊まれる古民家〟を超えて
住宅新報 2026年3月24日 号 21面

1階には囲炉裏があり、窓の外には焚き火コーナーも
一体運営を前提にデザイン
工期は約1年。古民家の風合いを残しつつ、宿泊施設としての安全性と使い勝手を確保することが中心課題だった。
設計の骨格は「古民家とキャンプ場の一体運営」。だからこそ、テント泊が合う層だけでなく、自然を楽しみたいが快適性も重視したい層に向け、古民家宿泊やグランピングといった選択肢を同時に用意した。友人家族同士で訪れても「片方はテント、片方は古民家」という〝使い分け〟が生まれやすく、結果として多様な需要を取り込む構成になった。
建物内部は、1階を人が集まれる共有空間として位置付け、吹き抜けの開放感を持たせた。囲炉裏の設置は「古民家らしさ」を象徴する装置であると同時に、滞在体験の中心となる。火を囲む時間は、宿泊者の記憶に残りやすく、食事や団らんの質を高める。
2階は宿泊者の完全プライベート空間として機能分離し、「静けさ」と「にぎわい」を同居させた。裏庭で焚き火を楽しめる仕掛けも加え、古民家の室内体験と屋外のキャンプ体験を滑らかにつなぐ。
バージョンアップを継続
施工の推進役となったのは、オーナーの同級生で大工の職人だ。飲食店の店舗工事などで付き合いがあり、今回も中心的に改修を担った。完成後も建物は〝育て続ける〟必要がある。そのため、その職人が専属としてプロジェクトに加わった。現在は露天風呂の新設も設計中で、「完成して終わり」ではなく、改善を積み重ねる運営体制が形になりつつある。
蔵をBarに改修
更に注目したいのが、母屋の完成後に着手した隣接の蔵の再生である。かつて物置として使われていた蔵を改装し、小規模なBarとして新たに生まれ変わらせた。母屋のリノベーションで培ったノウハウを活かしつつ、重厚な梁や土壁の質感を残した空間にカウンターを設え、夜の滞在価値を高める装置とした。ここでは地元秩父が誇るクラフトウイスキー「イチローズモルト」も取り揃える。
昼は自然体験、夜は蔵Barで地酒やウイスキーを楽しむ――古民家再生は、点ではなく面として敷地全体へと広がりを見せている。
住所=埼玉県秩父市定峰345
ウリ=キャンプ場との併設により、アウトドアも満喫できる






















