彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇217 改正区分所有法と定借M 老朽化問題解消へ 築40年と70年に意味
住宅新報 2026年3月17日 号 11面
連載: 彼方の空

築40年以上の分譲マンションストック数
昨年5月23日に公布された改正区分所有法(以下改正法)が4月1日から施行される。高度経済成長期に大量供給された分譲マンションの老朽化問題を解決するのが狙いだが、その効果は現段階では不透明。そうした中、近年増え始めた定期借地権マンションはそうした老朽化問題を回避できるマンションとしても注目を集めている。どういうことか。改正法の中身とともに考える。
決議要件緩和も
一般の分譲マンションの最大の問題は老朽後の処置が決まっていないことである。それが何十年後になるかは物件によって異なるが、外壁補修・塗装、屋上防水、給排水管更新などの大規模修繕で追いつかなくなった場合は、一棟丸ごとリノベーション(改正法で創設された新たな概念)か、建て替え、建物解体、敷地・建物の一括売却かのいずれかを選択しなければならない。大規模修繕なら区分所有法上は「管理行為」となるので、通常は普通決議(区分所有者及び議決権の過半数)で可能となるが、上記一棟リノベ、建て替えなどになると「5分の4」を原則としつつ一定の要件を満たす場合には「4分の3」以上の決議で可能になるというのが改正法の中身である。
とはいえ「4分の3」に緩和されても四、五十年後の合意形成が果たして可能なのか。区分所有者らの高齢化などを考えると合意形成へのハードルは依然としてきわめて高いと言わざるを得ない。
寿命は80年
合意形成が出来なければ建物は老朽化の一途をたどるしかなく、最終的にはゴースト化してしまうリスクを負う。そこで、近年注目を集めているのが定期借地権マンションである。定借マンションなら契約で借地期間終了後は建物を解体して土地を地主に更地返還することが決まっているので、あれこれ議論する必要はないというわけだ。
特に注目すべきは、近年の定借マンションはその借地期間が法律上は50年以上だが、実際は70年以上と長期化していることである。この70年余という期間には大きな意味がある。というのも、鉄筋コンクリートマンションの物理的耐久性は適正な修繕を施していけば「80年」というのが専門家らの一般的見方だからである。つまり70年余で解体するという定期借地権マンションの取り決めは鉄筋コンクリートマンションの物理的限界を踏まえた合理的処置といえる。
ただ、改正区分所有法はこれまで規定がなかった建物の解体に関する制度を設け、決議要件を従来の「全員合意」から原則「5分の4」以上とし、更に老朽化・安全性不足などの事情がある場合には「4分の3」以上に緩和する道が設けられる。問題はこの「4分の3」規定が定期借地権マンションの「解体して更地返還」という借地人側の履行義務にどう影響するかだが、ある法曹関係者は「定借マンションも区分所有法上の建物である以上は当然解体決議が必要になる」と述べている。ただし、それはあくまでも手続き上のことで、定借マンションの区分所有者は定期借地権契約に従い当然、解体決議に同意する義務を負っていることは間違いない。
◇ ◇
ところで、現在の分譲マンションストック数は約75万棟(約770万戸)だが、これまでに建て替えられた分譲マンションは国土交通省の「マンション建て替え等の実施状況」(2025年3月31日時点)によると累計323棟で、その平均築年数は約40~45年と見られている。
実際は「80年」という耐久性がありながら、その約半分の築年数で建て替えられているのはなぜか。「社会的寿命は物理的寿命より短いから」というのが一般的な見方だが、実は40年余というのが入居者の高齢化を考えると合意形成が可能となる〝最後のタイミング〟となっているからではないだろうか。






















